劇場公開日 2001年4月28日

「魅惑的なチョコレートと気まぐれな北風がもたらす大人の寓話」ショコラ ターコイズさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0魅惑的なチョコレートと気まぐれな北風がもたらす大人の寓話

2022年11月12日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

映画の凄さの中に、キャスト、脚本、映像、音楽すべてがマッチしたときのパワーがあると思ってるのだけど、これはまさにそういう作品。ジュリエット・ビノシュも、ジョニー・デップも、ジュディ・デンチも本当に素晴らしいし、娘役のアヌークを演じる「ポネット」のヴィクトワール・ティヴィソルも完璧すぎる。音楽も、オリジナル曲に加えて、黒い瞳によってチョコレートのもたらす快楽が官能的に、グノシェンヌ1番によって風に心をかき乱される不穏さが表現され盛り上げてくれる。
DVDにはオーディオコメンタリーがついていてこれによって、原作の世界観を尊重しながらも大胆に改変が行わせたことが伝わってくる。随分前に原作も読んだのだけど、なるほど、対立軸が伯爵とヴィアンヌの関係とに変更が行われたことで、人間ドラマとしての受け止めやすさが原作より増しているように思う。
ハルストレムがあまりにコメディ的になることや感情的になることにとてもナーバスになっていたことが伝わってきた。だからこそ抑制の効いた、大人の寓話になっているのだと思う。
制作のデビット・ブラウンが、寓話こそ真実を語ると延べていたように、「気まぐれな北風」といった風がそこここでストーリーを動かすこの作品は、ややファンタジックなエッセンスを含みつつ人間性をしっかり描いた魅惑的な作品で、たまらなく好き。

ターコイズ