ショコラ : 映画評論・批評
2001年4月16日更新
2001年4月28日より丸の内プラゼールほか全国松竹系にてロードショー
食べる者を幸せにする不思議なチョコ
その味わいは上質ながら、ちょっぴり青カビの臭気を漂わせているような、そんな頑固な職人の手仕事ぶりを感じさせるチョコレート風味の映画「ショコラ」は、ノスタルジックな風景の中に伝説と現実を絶妙に交錯させた、苦味を内包する希望と決意の物語。村人全員が教会へ日参するほどの厳格な村に、北風と共に突如現れた赤いコートを着た謎めいた母娘。村人の好奇の目が見詰める中、チョコレート・ショップを開いた母ビアンヌは摩訶不思議な才能で訪れた客の好みをピタリと当てる。そして彼女の作るチョコレートを頬張った者は、ささやかだけれど深刻な内に秘めたる悩み事を解消していく。そして彼女自身もこの村で、放浪の旅に終止符を打つキッカケを見付ける。ところどころにファンタスティックな描写もあるので表面上はあたりの柔らかい空気に包まれた映画だが、実はかなり辛辣な心の闇を抱える人々が出てくる映画でもある。けれど人生は悲喜こもごもだからこそ面白く、結果よりも経過にこそ人生があり、だからこそ一所懸命に生きる人の姿が物語りに映えるということがよく分かる。それにしてもビノシュとデップが同じ歳だなんて驚き。一緒の画面に映るとまるで親子ですぜっ!?
(大林千茱萸)