「拾った屑野菜で何やらごちゃごちゃ煮込んで旨そうに食うシーンに「生のエネルギーは食にあり」と。」血と骨 ezuさんの映画レビュー(感想・評価)
拾った屑野菜で何やらごちゃごちゃ煮込んで旨そうに食うシーンに「生のエネルギーは食にあり」と。
田畑智子が雰囲気を出していた。
不幸を一身に引き受けた様な、
過酷な人生におろおろと流される
お姉ちゃんの味が実によかった。
雰囲気といえば終戦前後の長屋のセットにリアリティーがあって、
見た事のある様な風景に、完全に映画の中に取り込まれてしまった。
驚いた事には、俊平や英姫が住んでいる路地建物の位置関係が、
原作でイメージしていた物とぴったりだと言う事、
本がしっかりしていると言う事でしょうか。
いや、セットがしっかりしているからでしょう。
それにしても崔監督、かなり思い切ってストーリーに手を加え、
新しい「血と骨」を創作しているかと思ったらそうじゃなく、
かなり忠実に原作をなぞったものでした。
見る者を引っ張って行く演出力はなかなかのものでしたよ。
印象に残ったシーンは、
俊平が屠殺の残材で仕込んだ得体の知れない食い物に、
蛆を振り払いながら食らいつくシーン、
同じく俊平が、拾った屑野菜で何やらごちゃごちゃ煮込んで旨そうに食うシーン、
そこに「生のエネルギーは食にあり」と妙に納得させられました。
エンディングで梁石日さんがじっとこちらを見ていました。
実父をモデルに書いた本ですから、
そこに何とも言えない強靭な意志を感じ、ぞっとしたのを思い出します。
粗暴で凶悪な俊平役のビートたけしは、
これが地なのかと錯覚するような迫力があったし、
濱田マリが存在感のある役どころで
結構面白い映画でした。
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