「衝撃のラスト・と、痛烈な風刺。」猿の惑星 とみいじょんさんの映画レビュー(感想・評価)
衝撃のラスト・と、痛烈な風刺。
いつまでも心に突き刺さる。
単なる”実は…”というオチではない。
公開時、ネタバレ厳禁とされた映画。
とはいえ、そのネタバレはいろいろな解説で聞いていた。
だが、前半の異文化の中でのハラハラから、
洞窟シーンでの種明かし、
その流れの中で知るあのラスト。
テイラーと一緒に喚き散らしたい気分だった。
人間が、他種にやっていること。
観察・実験・世話の様子が、痛くてたまらない。
テーラーが昆虫採集用に捕まえた虫、里に下りてきてしまった野生生物になったようで、その行く末にハラハラ。
ペット・家畜や実験動物に対する仕打ちと同じ手術・ロボトミー・博物館。
医学・科学の発展と命の尊厳。
いったい何様なんだと、怒りが猿に向くと同時に、同じことをやっている自分たちへも突き刺さる。
そんな中、収監された動物と心をかわしたいジーラの仕草がかわいらしくて。
ここでも動物たちと関係を作りたがっている自分たちを見ているようで、複雑…。
そしてサルたちの世界がこそばゆい。
裁判・葬式・学問への情熱・昇進・出身によって決まってくる地位…。進化論に対する論議まで再現。
まるで私たちの世界を見せられているようで苦笑してしまう。
テイラーの、ジーラ達へのふるまいが暴力的なのがすごく気になった。
宇宙飛行士となった人だから、知的で紳士的なふるまいを期待したけれど、ターザンか里に下りてきてしまった野生動物かと言いたくなるようなふるまい…。痛みや不安でああなっているのかな?古いアメリカ映画だからああいう乱暴なのが”男らしさ”の表現なのかな?なんて思っていたけれど、
最後のオチにつながっているとは。
うまい!!!
テイラーと同じ行動様式の、すべての現代の人間の日々の行動・考え方が、オチにつながる。
なんて、思いながら見ていると、あながちSFとも言えず、未来予言のようにも見えてくるところで、あのラスト。
「禁止区域」「禁止区域に存在する遺跡」という時点で、オチの予感はひしひしと伝わってくる。
そこに、ザイアスの説明。
テイラーの行動で証明されている人間の性。使役動物(家畜・奴隷)としての”人間”なら増やす方が良いだろうに、なぜ”去勢””駆逐”が必要なのか!!!
それを反面教師にして猿たちが作り上げてきた世界。
そしてラストのショット。この結果を招いたのは…。
冷や水を浴びせかけられた気分。
探検・サバイバル映画でもあり、
何がどうなっている?とミステリアスでもあり、
異文化経験のワクワク感と、自分たちへの風刺に苦笑し、
ジーラやコーネリアス・ザイアスらの怖いビジュアルと、愛らしい動作・表情のギャップに愛着を覚え、
B級映画的なノリに、くつろぎながら楽しんでいると、
最後にとてつもないシンプルなメッセージをつきつけられる。
生涯忘れられないインパクト。
未来に伝えたい映画。
地球が、私たちの知っている地球として残っていくために。
(原作未読)
ああ、確かに、続編・サイドストーリー・スピンオフ…ジーラとコーネリアスの物語とか…を作りたくなる。
愛しくなる映画。
子どもの頃、TVでこの映画を観て以来のファンです。
当時TVドラマ化もされましたが、それも見てました。
TVシリーズは途中で打ち切りになってしまい、あまり記憶には残ってませんが、やっぱりブームだったんですね~
新三部作も大好きです!