「ただ息をしてる」キャスト・アウェイ Croさんの映画レビュー(感想・評価)
ただ息をしてる
最近、ずっと死のことを考える。何もかも嫌になって、行動することから逃げ、考えることを放棄しても死についてのみ思考から離れない。
絶望している、と悟ってしまった。もうこれ以上の希望がないことも、希望すらもう必要がないと思ってしまっていることも、チャックと同じように、ここで止まって首に縄をかけてしまおうと思っていることも
俺にはウィルソンもいないし、ケリーもいない。ウィルソンに近い存在もいたけど、そいつもいなくなってしまった。楽しいこともない。まるで無人島でただ生きるためだけに飯を食って、寝て、息を吸って吐くだけの毎日だ。孤独に、ただひたすら
でも、それでもここではないどこかへ旅立って、そこで朽ちたいとも思っている。その為に、出来ることはしてきた。筏も下手くそなりに作って、この無人島から脱出しようと
チャックのように、ケリーに会うという希望はない。むしろ、ここで朽ちた方が会いたい人にすら会える。生きる希望などないのに、筏を作ってる
けれど、まだこの広い海に身を投げ出す勇気がなかった。チャックにとっても、無事に生き長らえることができても、希望はなく、ただどこにでも繋がる十字路の真ん中で息を吸っていただけだった
自由は酸素だ。それは分かる。ショーシャンクの空にで教わるまでもなく、俺はずっと前からそんなこと、分かっていたはずだ
筏を出す勇気がなく、縄をくくっている今の俺には、大海原の真ん中で息もできず救助されなかったもうひとつの世界線のチャックだったとしても、前に進めた彼のことが羨ましく、妬ましく、美しいと思う
きっとここにウィルソンがいたら、俺も筏を出す勇気が出せたのに、と毎日思ってる。漂着することを待つのではなく、自分から探しに行かなきゃ見つからないことも分かってるけど、絶望とは根深いものだ
でも、まだ息をしてる。息をしてる限り、立ち止まることも、迷うことも、漂流することも、十字路の真ん中で息をすることも出来る。それがまだ、愛おしいと思える。希望に満たないそれで、まだ息ができることをこの映画は教えてくれている