さらば、わが愛 覇王別姫のレビュー・感想・評価
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じわじわとくる大作
蝶衣にとって、「京劇」と「小樓への愛」が人生の全てであった。
舞台の上で、側室である虞美人が項羽を愛することしかできなかったように、現実でも、他の女と結婚した小樓を愛することしかできない。
少年時代、運命を受け入れることを強いられ、初舞台で男色の餌食となってから、彼の男としてのアイデンティティーは崩壊する。
その帰り路に赤ん坊を拾い上げ、小樓と夫婦のように歩く姿は、男でもあり女でもある蝶衣を象徴しているように思えた。
レスリーチャンの、性別を超えた美しさは圧巻。嫉妬と高潔さが織り交ぜられた表情や、役者としての覚悟の深さは、セリフを必要としない。
めくるめく悲劇と裏切りの末のラストシーン。
時は流れ、蝶衣と小樓の関係は愛憎を超越している。子ども時代のセリフの言い間違えにグッとくる。
京劇が続けられない時代。これ以上自分から大切なものが失われないように、高潔な自分を守るための、蝶衣の最後の手段だと解釈した。
久々フルに集中しての鑑賞
2023年4K版ということで久々の鑑賞でしたが、画質はそれ程グレードアップしている印象はありませんでした。それよりも、決して色あせることのない感傷的で壮大な物語は、改めて不滅だと感じた次第です。正直、見るのは辛すぎるので、─長いし・・・─、何度も見たいとは思えないんですが、結果的に結構鑑賞しているし、見る度にいい・・・と思ってしまいます。現代的な愛を扱っていながらも、歴史的な事柄をうまい具合に絡み合わせて、なおかつ京劇という題材が全面に出ている紛れもない中国映画、なのに生きるに過酷なこの社会を身につまされてしまう・・・もはや奇跡的な作品としか言いようがありません。見るれば見るほど感傷的になってしまう場面が増えるような気がして、容易に鑑賞しようとは思えない作品なんですが、何度見てもやっぱいいです。
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