「映画的な迫力と美しさに圧倒される傑作」さらば、わが愛 覇王別姫 和田隆さんの映画レビュー(感想・評価)
映画的な迫力と美しさに圧倒される傑作
京劇の古典「覇王別姫」を演じる2人の京劇役者の愛憎と人生を、国民党政権下の1925年から、文化大革命時代を経た1970年代末までの約50年にわたる中国の激動の歴史とともに壮大なスケールと映像美、音楽で描いた一大叙事詩です。
遊女である母に捨てられ、京劇の養成所に入れられた少年・小豆子が、厳しく過酷な稽古に耐えかねて逃げ出した町中で、初めて本物の京劇を目撃するシーンの映画的な迫力と興奮に、まず鳥肌が立つことでしょう。また、スターとなった主人公の2人が一転、文化大革命時に反革命分子として大衆の前で糾弾されるシーンは圧巻。実の父親を裏切って糾弾した苦い体験を持つカイコー監督自身の思いも込められており、その不条理な描写に圧倒されます。
そして今回の4K公開で最大の見どころは、やはり主演のレスリー・チャンの美しさです。小豆子が成人し、姫を演じる女形となった程蝶衣。覇王を演じる段小樓へ秘かな思いを寄せる程蝶衣をレスリー・チャンが、狂おしいほどの妖艶さと儚さで演じています。
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