劇場公開日 2023年7月28日

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「恐るべき傑作 映画史上屈指の名作だと思います 「ラストエンペラー」より数段は上です」さらば、わが愛 覇王別姫 あき240さんの映画レビュー(感想・評価)

5.0恐るべき傑作 映画史上屈指の名作だと思います 「ラストエンペラー」より数段は上です

2022年8月2日
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鑑賞方法:DVD/BD

物語は1924年から、1977年頃までの50年以上もの中国の物語
冒頭の体育館のようなところのシーンが1977年のこと

22年前とは1956年頃の「百花斉放・百家争鳴」という、知識人が共産党の政策を批判することを毛沢東が奨励した頃のこと
結局「百花斉放・百家争鳴」は罠で、批判した55万人もの人々は「反右派闘争」によって全て追放されています
現代劇について主人公が意見を述べるシーンはそれを表現しています

11年前とは1966年の文化大革命のこと

11年後の1977年に四人組が失脚して文化大革命が終結して、京劇も踊れる世の中になり、二人はまたコンビを組もうとしていたようです

四人組とは文化大革命を主導した、中国共産党の幹部4名のこと

江青(中国共産党中央政治局委員、中央文革小組副組長、毛沢東夫人)
張春橋(国務院副総理、党中央政治局常務委員)
姚文元(党中央政治局委員)
王洪文(党副主席)

文化大革命については、劇中にあるとおりの凄まじい政治的ヒステリーで、決して誇張されていません
筆舌に尽くし難いことが本当にあったのです

ラストシーンの1977年は、主人公の蝶衣と小楼はそれぞれもう60代のはず

それ故に美しい姿のままで記憶の中に生きようとしたのだと理解しました

2022年8月3日
米国の下院議長が台湾に政府専用機で降り立ち、台湾の総統に面会したという大ニュースが流れています

二つの中国、大陸と台湾

中国はひとつだと中国共産党は怒り心頭で今にも戦争を起こしそうな雲行きです

大陸と台湾、なぜこうなったのかも本作の物語の背景として描かれます

台湾、正式には中華民国
中国の長い長い数千年の歴史初めての民主主義共和国
美しい理想

しかし中華民国は大陸の内戦に敗れ台湾に逃れてきたのです
確かに第二次大戦頃の中華民国政権は腐敗していたようです
しかし中国の民主主義共和国なのです

大陸は中国共産党が支配しています
皇帝のように一人の人物が君臨して人民を支配しているのです

ラストシーンのテロップにこうでます
「1990年北京では、京劇一座北京入城200周年を記念する祝賀上演が行われた」と

1990年は天安門事件があった翌年です

大陸と台湾
どちらが本当の中国なのでしょうか?
まるで蝶衣と小四です

蝶衣が、小四に主役の座を追われたシーンは1971年に台湾が国連から脱退させられたことを思いださせます

劇中劇の覇王別姫の物語
クライマックスは四面楚歌となり、残ったのは、一頭の馬と一人の女のみ
もはやこれまでと、馬を逃がそうとしたが馬は動こうとせず
愛姫も王のそばにとどまった
愛姫は王に酒を注ぎ剣を手に王の為に最期の舞を舞ってそのまま我が喉を突き王への貞節を全うした

京劇一座の師匠はこう言います
「この物語は我々になにを教えているか
人はそれぞれの運命に責任を負わねばならぬということだ」

蝶衣は老いて醜くなり、そして舞も出来なくなる自分の運命を受け入れたのだと思います
責任を負うとは、彼にはこういう事であったのです

そして大陸と台湾
四面楚歌なのは台湾?
それとも中国共産党?

運命に責任を負わねばならないのはどちらなのでしょうか?

「かっては絶大の権勢を誇った楚王
如何なる英雄といえども定められた運命にはさからえないのだ」

あき240
とみいじょんさんのコメント
2022年8月4日

私のレビューへの共感をありがとうございました。

あき240さんのレビュー、すごいですね。
 歴史と、中国・台湾の関係、生き様へ”責任”。
 視野が拡がりました。
 ありがとうございました。

とみいじょん