劇場公開日 2006年9月30日

「途中ちょっとだけウトウトしてしまいましたが、94%は覚えていますよ!」カポーティ kossykossyさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0途中ちょっとだけウトウトしてしまいましたが、94%は覚えていますよ!

2019年4月14日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

 ニコラス・ケイジ主演映画『8mm』では、アダルトショップの店員マックス(ホアキン・フェニックス)が読んでいた「アナル秘書」のブックカバーの下にはカポーティの「冷血」が隠されていた。裏世界の犯罪者の愛読書なのかと先入観を持ってしまっていたので、この映画に登場する一家4人惨殺事件の犯人の1人ペリー(クリフトン・コリンズJr.)の姿に驚きを隠せませんでした。トルーマン・カポーティについての知識も全く持ち合わせていなかったので、『ティファニーで朝食を』の原作者だったことにも驚いてしまいました(無知ですみません・・・)。

 社交界でも饒舌、変人と見られるほどであるが天才的な小説家カポーティ。ゲイであることも相まって性格も読みづらい。しかし、さすがはアカデミー賞主演男優賞を獲得したフィリップ・シーモア・ホフマンがその難しい役作りを見事にこなしていました。1959年の凄惨な事件を知り、意欲的に取材に取り組むことになったのですが、犯人が捕まると、その心理を追求したくなり、長編ドキュメンタリー小説を書きたくなる。

 興味本位からスタートして、彼の生い立ちを知るにつれ徐々に共感を覚え、優秀な弁護士を紹介して控訴まで持ち込む。「冷血」というタイトルをも決めて、前編を発表したりもするが、犯人ペリーにのめり込むにつれ、小説のタイトルを彼に伝えられなくなってしまうのです。被害者の友人からも刑事からも日記を借り、真相を追究する姿勢は気迫に満ちたものでしたが、ペリーの日記だけはそれが裏目に出てしまったのかもしれません。

 事件当日の真相を知りたい。その一心で彼に心をぶつけるが、逆にペリーの方も親近感を覚え、接見で涙を流すほどに・・・恐ろしい事実を知ったときには「早く死刑執行されればいい」と考えも変わったのでしょう。その辺りは微妙な葛藤、ジレンマ。ホフマンとコリンズのやりとりが徐々に表情が変化、犯行当日の真相を聞きだす時点で一変するところが見ものなのです。だけど、カポーティが冷血なのかというとそうでもないような気がする・・・彼を救おうとしたけど、できなかったという自責の念をもこめた作品発表だったのだと思います(かなり推測)。

 面白いのは助手としてカポーティを手伝っていたネルが『アラバマ物語』を発表した席。彼は駄作だつぶやいていましたが、映画は名作。黒人青年を助ける熱血弁護士の話と、最終的に見放してしまったカポーティとのコントラストがとても皮肉なコントラストになっていました。

kossy