アカルイミライのレビュー・感想・評価
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クラゲと怪物性
この作品における「クラゲ」の立ち位置がとても秀逸だと思った。
生きているのか死んでいるのか分からない。見た目からは想像できないような猛毒を持つ。それなのに人を引きつけるような魔力がある。
これがそのままマモルが持ち、ユウジが獲得しつつあった「怪物性」の象徴になっていた。
この象徴がそのままメタファーになることで、クラゲとそれぞれの登場人物の関係性の変化が「怪物性」への向き合い方の変遷になっている。物語終盤、マモルの父が海に向かおうとしているクラゲに触れて刺されるところなんか物語序盤の父と子の面会室のくだりそのままだった。
父、上司、同僚、とクラゲに刺された(刺されかけた)彼らのことを考えると、マモルが向けていた敵意や排他的な意思がそのまま物語上のクラゲによる被害の大小になっていたようにも思えるそう考えると、物語中唯一姿が映らないクラゲの被害者である彼女はマモルが持つ「家庭」への敵意とも解釈できる。
ここで考えなければならないのが、他でもないマモル自身がクラゲを淡水へ馴染ませようとしていたことだ。クラゲが「怪物性」のメタファーだとするならば、マモルは「怪物性」と向き合いそれを不自然であるとしながら淡水という名の「社会」に馴染ませようとしていることになる。もしマモルが本当に「怪物性」を「社会」に馴染ませようとしていたのなら、それはきっと失敗してしまったのだろう。まるで物語中、ユウジがマモルからの指示が嫌になって水槽を倒してしまったように。
頭の中でまとめながら書いているから混乱してきた。
つまり何が言いたいかと言うと、物語内の「ユウジ&シンイチロウ(マモルの父)とクラゲの関係性の移り変わり」がそのまま「マモルが「怪物性」と向き合い失敗するまでの過程」の比喩になっており、それを俯瞰的に見る観客がメタ的に「怪物性」の存在と触れ合うという構図がこの映画にはあるのではないかということだ。
日本の映画の最先端にいるのは黒沢清監督です
恐るべき傑作中の傑作です
2003年の公開の時にはそのテーマや意味や意義は判りづらかったかもしれません
しかし、公開から20年近くたった今ならそのテーマは明確に見えてきています
テーマは失われた10年いや今では20年なのだと思います
雄二も守も超氷河期世代です
ふわふわして何の目的もなく生きていく若者
それはクラゲです
しかし猛毒を秘めているのです
その毒で殺される人間も出るのです
雄二と守の父親世代は団塊の世代です
つまりあのおしぼり工場の社長や、守の父親の世代です
彼らはバブルと共に崩壊しつつあるかっての日本そのものです
おしぼり工場の社長は昭和の人間関係を象徴しています
電器製品リサイクル店の親父は、正に家電製品や電子機器で世界を制覇した産業日本の象徴です
どちらも、もはや時代遅れになってしまっているのです
それを認めようとせずにいつまでもそのままでいようとしています
明るい未来を信じていた人なのです
マモルはそのどちらも拒否したのです
そして自分の未来も拒否したのです
彼は雄二に
「行け」のサインを出していました
つまり我に続けのサインでした
雄二はそのサインを見過ごしてしまいますが
クラゲを東京の中に放ってしまうのです
結果的にそのサインは実行されました
クラゲは増殖して運河や川にいっぱいになって流れていくのです
あの不良高校生達は、バブル崩壊とともにうまれた子供達です
かれらはバブル崩壊後の日本しか知らずに育ってきたのです
かれらは生まれながらにしてくらげなのです
海水でなくても生きていけるクラゲなのです
ラストシーン
遊歩道を歩く不良高校生達
その後ろに同年齢の子供達が続いて行きます
あの運河、そしてやがて川いっぱいに流れていくクラゲの光景と同じ光景なのです
そして今は2020年
事態は進行していくばかりです
誰の目にもクラゲがいっぱいだと分かるようになりました
運河も川もクラゲでいっぱいです
クラゲは駆除されなかったのです
その守もいまは40歳くらいの中年男です
彼は家庭を持ったのでしょうか?
子供を持ったのでしょうか?
彼の老後はどうなるのでしょうか?
子供がいたならどういう未来が待っているのでしょうか?
アカルイミライ
明るい未来とどうして漢字ではないのでしょうか?
そんなもの実態はない、信じちゃいない
言葉だけのもので意味はないのです
だから発音だけのカタカナなのです
日本の未来
それこそクラゲのようにふわふわして浮遊してどこにどう流れていくものかわからないのです
失われた10年は20年となり、30年にもなるかも知れなません
もしかしたら明るい未来なんて来ない知れないのです
バブル崩壊に続く日本の実相を描いた名作です
これこそ絶対に映画にしなければならないテーマです
誰かがやらなくてはならないのです
だからこそ黒沢清監督が撮ったのです
日本の映画の最先端にいるのは黒沢清監督です
服がボロボロ(笑)
何を撮りたかったのかな…
クラゲかな
アパートかな
ボロい一軒家かな
ゾンビみたいな服かな
運転席と助手席の二画面かな
地下に降りる階段のある面会室かな
どれも良い画面だけど
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あ!子役の松山ケンイチを見逃さなかったあたしエライ
いやー、これは難しかったなー でも印象的な作品となった。深すぎて黒...
いやー、これは難しかったなー
でも印象的な作品となった。深すぎて黒沢監督のドキュメンタリーみてなんとなく骨子を掴むことが出来た。
クラゲ
社長殺しを自白して拘留された有田(浅野)。5年会ってないという父親(藤)が登場。弁護士の話によると、20年、無期懲役、場合によっては死刑もあり得る。
守が死んでから、クラゲの飼育に人生の目標を見出したのだろうか、中盤からずっとクラゲの世話だ。川に流れる大群が妙に綺麗なんだけど、かなりの公害だな。
やがて犯罪へと走る若者の集団に入ってしまうが、未来ってそんなものか?色々考えさせられる。
無目的と孤独にもがき苦しむ若者とオヤジ
何のために生きるのか。
何を目標にして生きるのか。
生き甲斐って何なのか…無目的の恐怖。
何も考えなくても日雇い的に働いて、食って寝て、その他ちょっとした楽しみができれば何となくずっと生きて行けそうな現状。
でも先が見えないから、落ち着かない。
何かやらかさないと落ち着かない。
一人でいることが怖い。
そんな混沌の感情を表現していると感じる。
オダギリジョーくんの演技や表現がいい感じにハマる。
生きてるんだか死んでるんだかわからないふわふわしたものが、どん底の環境でも生き抜き、勢いを増して広がっていく例のモノが、アカルイミライを象徴していくのだろうか。
抑制を失って練り歩く子供たちは、まるで例のモノのよう。つかみどころがなく弱っちいようだが、実は猛毒を持つ者。
観終わった時に、安堵と不安が入り混じって居た堪れない気分になった。
見逃してはいけない傑作
名優ショーン・ペンが、「プレッジ」以来6年ぶりにメガホンを取った「イントゥ・ザ・ワイルド」は、劇場を出た後も余韻が続く、[これぞ映画!」と思える映画らしい映画で、とても感動的だった。これは見逃してはいけない傑作だと思う。
物語は、自分ひとりの力で生きるべく全てを捨ててアラスカを目指した少年が、アメリカ大陸を横断する途中で様々な人々と出会い、それらの人々と交流を重ねることで家族との問題を見直し、大事なことに気がつくのだが……という話なのだけど、実話がベースになっているだけあって、かなり衝撃的でした。でも、すごく丁寧に主人公の感情の動きを追っているので、自然と胸が熱くなってしまうシーーンが多々ありました。中でもアカデミー賞助演男優賞にノミネートされた、ハル・ホルブルックとの共演シーンと、ラストのシークエンスは必見!
それからアメリカ大陸の様々な表情やアラスカの雄大な自然を切り取った映像が本当に美しいです。その景色を観るだけでも十分おつりが戻ってくる作品ですね。ちょっと残念だったのは音楽が冗長だったことだけど、エモーショナルな楽曲が多いので、不満ってほどではありません。もう1~2回は劇場で観ようと思います。
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