劇場公開日 2006年7月8日

「RPGゲームをしたくなるアニメ映画。だけど最後にはしたくなくなる」ブレイブ ストーリー kossykossyさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0RPGゲームをしたくなるアニメ映画。だけど最後にはしたくなくなる

2018年10月30日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

 直木賞作家宮部みゆきはゲーム好きだという。主人公ワタルの家庭や芦川ミツルの設定以外は全てドラクエなどのRPGの世界そのもの。ゲーム好きが昂じて書いた作品なのでしょうけど、ただ敵を倒して成長するストーリーではないところがいいですね。

 『ナルニア国物語』のように、戦って平和を勝ち取るといったファンタジーは20世紀に入ったら時代にそぐわない物語だと思うのですが、一方的な視点から描くゲームの世界は別物なのでしょう。自分さえ良ければ、他はどうなってもいい。とにかく勝てばいいんだから、どんどん敵を倒すことに専念すればいい。観ている多くの子供たちも、「頑張れ!そこで最後の願いを叶えろ!」と心の中で叫んでいたのかもしれませんが、そんな都合のいい結末にしてしまっては社会派の宮部みゆきの名が廃ります。冒険の部分はかなり端折られている雰囲気でしたが、主人公の心の葛藤部分はかなり時間を割いて、何が大切なのかを訴えてくる映画でした。ただ、もっとストレートに反戦メッセージを出してもよかったのでは・・・あれだと単なる強大な召喚魔法のようです。

 ワタル少年の父親は家族を捨て、家族はボロボロ。そして母親が倒れ集中治療室へと運ばれる・・・そんなとき、転校生芦川の言葉を信じて、運命を変えるため幽霊ビルの階段の上の扉を開く。そして、不思議なヴィジョンと呼ばれる世界に足を踏み入れたワタルは「母親を助けたい」という願いを聞いてもらうために冒険を始めるのです。「見習い勇者なんてやだ~!魔道士がいい!」などと駄々をこねてましたが、風変わりな設定のRPGといったところです。

 松たか子の声もよかったんですけど、途中、どうしても少年の声より大人の女性の声に聞こえてしまうので、もうちょっと頑張ってもらいたかったところです。それよりも常盤貴子が声を担当したハイランダーのカッツがよかった。最も迫力があったのは樹木希林でしたが、純粋な子供たちは今晩悪夢にうなされるでしょう。そして、残念だったのが音響効果・・・スカイウォーカー・サウンドって日本映画をナメているのかもしれません。

 それにしても客席には子供、子供、子供・・・終わってから「そんなに怖くなかったね」と言ったやつ!あとでお母さんに教えてもらいなさい!

kossy