劇場公開日 1996年6月22日

「事件よりも登場人物の性格と動きを観る作品」誘う女 Cape Godさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5事件よりも登場人物の性格と動きを観る作品

2019年8月26日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

総合70点 ( ストーリー:70点|キャスト:80点|演出:75点|ビジュアル:70点|音楽:65点 )

 実際に起きた犯罪を基にした作品だが、犯罪行為と事件の内容よりも人物に焦点を当てている。主人公の描き方は強調されて大袈裟なところはあるものの、登場人物の設定と演技は面白い。

 特に主人公スザーンを演じたニコール・キッドマンは、美人で野心家で行動力と性的魅力がありながら、馬鹿で短絡的な小人物の二面性を上手く演じていた。学生役を演じるまだ若きホアキン・フェニックス、ケイシー・アフレックの2人も観られる。スザーンにただ利用されていたリディアは、家庭環境も悪く特に美人でも優秀でもなく友人も無くて設定上は決して目立たない役柄の存在だったが、スザーンに騙され彼女を友人だと思って取り込まれていく過程がなかなか良かった。その意味で作品中では目立っていた。
 物語には不満もあり、なぜスザーンは有名になろうとしておきながら、都会に出ることもなく若くして田舎で地元の男と結婚してしまうのかをはっきりと描かない。また離婚よりはるかに大きな危険を取ってすぐに夫を殺そうとするのかも、主人公が馬鹿だったからという理解しかできない。そもそもなぜ夫を殺さなければならないほどの動機があったのかもわからない。ウイキペディアに調べてみると実物の彼女は顕示欲が強くて元々男好きな性分だったらしいが、作品中ではそれがよくわからない。そのあたりのスザーンの背景についてもう少し説明が欲しかった。

 監督は『グッド・ウィル・ハンティング』等で知られるガス・ヴァン・サント。いくつか彼の作品を鑑賞しているが、こんなちゃらい人の描き方と演出もしていたとは思わなかった。しかしこの独自性のある演出は悪くなかった。

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Cape God