バッド・エデュケーション(2004) : 映画評論・批評
2005年4月1日更新
2005年4月9日よりテアトルタイムズスクエアほかにてロードショー
前2作の“感動”を期待した観客が発熱しそう
映画に匂いなどあるはずもないが、画面から濃厚な香りを発散させるのがアルモドバル映画だ。ことにこの新作は、構想10余年、半自伝的作品とあって熟しに熟し、毒素にも似た刺激臭を放つ。「オール・アバウト・マイ・マザー」「トーク・トゥ・ハー」と前2作でオスカー2冠を達成、すっかり巨匠化したアルモドバルだが、元はといえば悪趣味チックな映画オタク。本作にはその要素が自身のゲイ性と共に練り込まれ、前2作の“感動”を期待した観客が発熱しそうな強烈さだ。
神学校の寄宿舎で“親友以上”の関係にあったエンリケとイグナシオ。長じて映画監督になったエンリケの元に、ある日、「イグナシオ」を名乗る美青年が1冊の脚本を持って現れる。果たして彼の狙いとは? 過去と現在、虚構(映画)と現実がミステリアスに交錯し、「悪い教育」の実態と、さらなる謎が封を解かれる……。
これは「悪い教育」、即ち聖職者の欺瞞を告発する映画ではない。むしろ、少年を純粋に愛しながらも性的虐待を加えたり、神も愛も失わざるを得ない人間の愚かさや悲しみを見つめている。グラマラスな女装も登場する極彩色の下地には、神父の服と同じノワールが透けて見える。
(田畑裕美)
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