阿修羅城の瞳 : 映画評論・批評
2005年4月15日更新
2005年4月19日より丸の内ピカデリー2ほか全国松竹・東急系にてロードショー
染様、ステキ!寛大な心で見たくなる
00年に上演された舞台版を観劇し、市川染五郎演じる“鬼殺しの出角”の凛々しさと色気、そして殺陣の格好良さに惚れた一人である。だが、いかんせん、テレビドラマで現代劇を演じるとなると、その魅力の半分も出てないようなもどかしさを感じていた。それだけに映画は?と危惧していたが、杞憂だった。染様、ステキ! やはり時代劇の基本が出来ている役者は違う。その動きは大画面のスクリーンに映え、新映画スターの誕生に嬉しくなってしまった。
歴史や神話を基に壮大なアクション劇を描くことを得意とする「劇団☆新感線」作品の中でも、本作品はとりわけラブ・ストーリーがメインで描かれており、誰もが共感できる物語だ。恋とすると鬼になってしまう娘と、鬼殺しの男の恋。この“禁断の恋”を盛り上げるのが、今、最もノっている女優・宮沢りえ。盗賊のおきゃんな娘が、阿修羅となって狂気をはらんでいくその様相は、近寄りがたいくらいの美しさだ。
「陰陽師」の滝田洋二郎監督らしいCGシーンの使用は賛否別れるところだが、なんと!映画を締めるのは、スティングによる“歌い下ろし”の「マイ・ファニー・バレンタイン」。よくぞスティングを口説いたという功績を讃え、ちょっと寛大な心で見たくなる作品だ。
(中山治美)