天海祐希、舞台女優としての10数年に思いを馳せる

2015年5月9日 09:10


インタビューに応じた天海祐希
インタビューに応じた天海祐希

[映画.com ニュース] 「劇団☆新感線」の公演を劇場で楽しむゲキ×シネの最新作「蒼の乱」が、5月9日に公開される。主演の天海祐希にとっては「阿修羅城の瞳」「薔薇とサムライ」に続く3度目の「新感線」出演。改めて“舞台女優・天海祐希”のこの10数年について話を聞いた。(取材・文・写真/黒豆直樹)

阿修羅城の瞳」のつばき、「薔薇とサムライ」のアンヌと同じく、本作で演じた蒼真もまた苛烈な人生を背負いつつ、生きる道を切り拓こうとする女性。「前半は時代や現状に翻弄され、生きたまま死んでいるかのように流されている。でも小次郎(松山ケンイチ)と出会ったことで『自分は生きていていいんだ』と思えるようになり、小次郎が――自分が愛した男が何よりも愛した故郷の国と民を守ろうと戦う。『愛している』という表現が彼女にとっては戦うことであり、だからこそ絶対に引けない。そこに蒼真の愛の深さがある」と天海は語る。愛によって生きる強さを取り戻したがゆえに彼女が向き合うことになる皮肉としか言えない運命…。これぞ新感線と言うべき人間の業を背負ったヒロインを天海は凛と強く体現する。

「こんなに荒唐無稽なことをさせてくれるところ、なかなかないでしょ(笑)。しかも稽古場から新感線を見ていられて、日に日にひとつの作品が出来上がっていく過程を一緒に味わえるんだから」。そんな言葉で天海は「新感線」の舞台への出演の楽しさを語る。

TVドラマなどの映像作品だけでなく、舞台の印象も強い天海だが、意外にも宝塚退団後に出演した舞台は10数年で9本と決して多いとは言えない。「新感線」作品に「パンドラの鐘」(99/作・演出:野田秀樹)、「オケピ!」(99/作・演出:三谷幸喜)、「テイク・フライト」(07/演出:宮本亜門)など錚々たる演出家による舞台で放つ存在感、インパクトがその印象を強くしているのだろう。天海にとって舞台は「その時の自分を試す場所」だという。

「生身でやるってことはすごいエネルギーを使うし恐怖も味わいます。“いま”の自分をさらけ出して、自分に足りないものに気づかされる場所でもあるんです。映像と違い、きれいに編集することもやり直すこともできないから、1回1回、その時に見に来てくださった方のため、『楽しかったね』と言っていただくために全てを使い果たして頑張る。それは舞台だからできることだと思います。役者としてお客さんの前にバンッと立っていられるのか? 自分が試されるんです」。

03年の「阿修羅城の瞳」は00年の再演に続く再々演だったが、00年版でつばきを演じたのは「パンドラの鐘」でも共演した富田靖子。天海は00年当時、関係者から公演のビデオを渡されたが「そこに自分がいないことが悔しくて…」、自身の出演が決まる03年まで見ることができなかったという。“悔しさ”は天海の原動力のひとつであり「いまだに03年の上演作品を見ても、できていない自分が悔しくなる。でも、そう感じなくなったら終わりだとも思っている」とも。一方で、年齢を重ねる中で見えてくるものが変わってきたことも自覚している。

「当然、若い頃の方が挑戦できる可能性も体力もいまより大きかったと思うけど、20代、30代はそこに気づかないんですよ、若いから(笑)。若さを通り過ぎて50が近づくいまだからこそ、自分に挑戦できること、できないこと、やらなくていいことの分別を持てるようになったのかな? でも50代後半、60代になったらできないだろうこともあって、それをきちんと理解した上で『いまだから無茶したい』と思えて楽しいですね。今日の私がこの先の人生の中で一番若いので!」。

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