「花ひらき はな香る 花こぼれ なほ香る」阿修羅のごとく shimoさんの映画レビュー(感想・評価)
花ひらき はな香る 花こぼれ なほ香る
映画「阿修羅のごとく」(森田芳光監督)から。
冒頭に「阿修羅」の定義がテロップで流れ、慌ててメモをした。
「阿修羅」とは、
「インド民間信仰上の魔族。外には仁義礼智信を掲げるかに見えるが、
内には猜疑心が強く、日常争いを好み、たがいに事実を曲げ、
またいつわって他人の悪口を言いあう。
怒りの生命の象徴。争いの絶えない世界とされる」
そして、作品後半に「女は阿修羅だよなぁ」のフレーズが突然現れる。
この「阿修羅」に関する「対」がとても効いていて、
さすが「原作・向田邦子さん」って感じで観終わった。
長女(大竹しのぶさん)の不倫、二女(黒木瞳さん)の夫の浮気、
三女(深津絵里さん)の嫁ぎ遅れ、四女(深田恭子さん)の同棲が
絶妙のバランス配置され、個性ある四姉妹を演じていて面白かったが、
もしかしたら主役は、仲代達矢さんと八千草薫さんの夫婦だったかもしれない。
さらには、長澤まさみさんが里見洋子役で、ちょっぴり出演していたのには驚いた。
ただ、気になる一言に選んだのは「花ひらき はな香る 花こぼれ なほ香る」
彼女たちが生まれた竹沢家に、そっと飾られていた軸(横長)の言葉。
これは故・森重久弥さんが、飛行機事故で亡くなった向田邦子さんの偲んで
墓標におくった言葉として知られている。
墓碑銘に刻まれている言葉は「花ひらき はな香る 花こぼれ なほ薫る」
(「香」は鼻で感じる匂い、「薫」は雰囲気や肌で感じる匂いとされる)
漢字がちょっと違うが、そのフレーズをサラッと使うあたりが、
監督・脚本家の妙ってところだろうか。
もう一度、図書館で原作を見つけて読んでみようと思う。
P.S.
昭和54年夏・毎朝新聞の投稿「主婦・四十歳 匿名希望」
新聞投稿は、匿名はダメじゃなかったかなぁ。(笑)