「色あせない映像」アメリ 映画イノッチさんの映画レビュー(感想・評価)
色あせない映像
23年前の強烈な印象がそのまま
不思議な世界観に酔いしれたあの懐かしい日々が蘇る
赤、赤、赤、どこまでも赤
冒頭に出てくるおじさんの使っている鉛筆から
父親の道具箱、海パンや持っているレジ袋
母親の眼鏡や洋服、そしてバッグやスリッパ
子供時代の遊び道具(イヤリング・折り紙)や何種類もの服・靴・カチューシャ
壁紙・ソファ・冷蔵庫・棚・調理道具
おじさんのジャージや何度も出てくる車、映画館の座席・ランプシェード・働いているレストランのテーブル・アルバムのケース
アメリの洋服・帽子・靴・傘・ベッドシーツ
挙句の果ては、タイトルロールの文字まで赤
でも不思議とやらしさを感じない
それどころか、トトゥの愛くるしい瞳のせいか可愛らしくもある
アメリの世界は赤
アメリ(トトゥ)と一緒に空想の世界に入り込んでしまい、(あり得ない)のに(あり得る)ストーリーへと、いざなわれる
現代でも新鮮な場面が矢継ぎ早に展開され、監督達のその才能に、驚かされる
もう1度言うけど、これ、23年前の作品なんですよ
鳴り響く公衆電話とフランスのレトロな街並みが、それを思い出させる
宝箱をきっかけに悟ったおじさんも、一瞬だけど恋に陥たジョゼフも、旅に目覚めた父親も、夫の不倫で苦しんだアパートの管理人も
アメリに救われた幾人もの人々が、人生に光りを取り戻す
若きマチュー・カソヴィッツ演じるニノの純情さも光る
ジャメル・ドゥブーズが、途中から見せる目の輝き
それだけで観ている人もワクワクする
ルノワールの「舟遊びをする人々の昼食」を模写するレイモンの存在が
実は物語の格となり進んでいく
大昔の仏旅行の際に行けなかった「モンマルトルの丘」を、ニノと一緒に駆け回ることも出来た気がした
そしてラスト、2人でフランス市内を駆け抜けるバイクのさわやかな風が、観る人にも吹いてきた