アメリ : 映画評論・批評
2001年11月15日更新
2023年11月17日よりヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館、ユーロスペースほかにてロードショー
「自分はちょっと変わってる」って誰もが思う時代にピッタリ
観た人誰もが幸せになる。ジュネがそんな映画を撮ったと言われても信じがたいが、まさに百聞は一見にしかず。デジタルでコントロールした濃厚な色彩に毒気を残しつつ、ノスタルジックな暖かさも漂わせる世界は、ジュネ印のおとぎ話ワールドだ。
しかし、そんなビジュアルだけでは、フツーの人は幸福になれない。ジュネ&キャロに興味のなかった女の子も今回はときめくのは、オドレイ・トトゥのルックスもとってもキュートなラブストーリーだから。ラブストーリーのヒロインに自分を重ねられるかどうかは、女の子には大問題。なるほど、自分の臆病な人生を棚に上げて、他人様を幸せにするイタズラをしかけていくアメリには、「何様のつもり?」な憤りも沸く。でも、このイライラがあるからこそ、自分の幸福(=恋)に向かって立ち上がるアメリの超ささやかな挑戦に、ひときわ胸も熱くなる。
そして、この甘い物語と、フツーの人もオタク気分に酔える適度な毒気を漂わせる色彩が、絶妙のマッチング。時代がジュネに追いついたっていうか、このテイストは、誰もが自分はちょっと変わっていると思っている時代にはまっている。エミリー・ワトソンを使うつもりだったジュネは、まだ乙女心はわかってないみたいだけどね。
(杉谷伸子)