あの頃ペニー・レインと : 映画評論・批評
2001年3月15日更新
2001年3月17日より日比谷スカラ座2ほかにてロードショー
クロウ少年の青春は甘酸っぱいトキメキの味
まったくのフィクションではないにしても、自伝は難しい。突き放しすぎてもつまらないし、美化しているという批判も怖いはずだ。しかし、キャメロン・クロウはこの難業に、真っ直ぐに取り組んだ(拍手)。
クロウ監督の青春は、音楽ファンなら誰でも(「ハイ・フィデリティ」の主人公も)憧れるローリング・ストーン誌のライターに、たった15歳でなった(!)経験が肝。しかし監督はこれを、特別な物語としては描かない。コンプレックスだらけの世間知らずな坊やが夢の実体を、知らなかった感情を知っていく。誰もが経験する「ボーイ・ミーツ・ワールド」の過程を、びっくりするほど素直に綴っているのだ。キラキラ輝いていた「あの頃」の、気恥ずかしさもそのまんま。憧れと初恋、ときめきと失望、やさしさに触れたときの胸のふるえ……。これがじわじわじわじわ涙腺を刺激して、もう胸キュン全開!
センチで甘いが、15歳の頃なんて、甘いものでしょ。しかもクロウさん、かなり無邪気ないいヤツとお見受けする。たとえ甘さが苦手な皮肉屋も、主人公に「手厳しく、正直に書け」と言うライター役、フィリップ・シーモア・ホフマンのロック魂には、グッとくるはずだ。
(若林ゆり)