アレックス : 映画評論・批評
2003年2月1日更新
2003年2月8日より渋谷東急3ほかにてロードショー
カルト映画とスター映画のいいとこ取り
冒頭の凄惨な暴力、9分におよぶ壮絶なレイプで、「賛否両論」のこの作品。しかし、むしろ、これは「好き嫌い」がはっきり別れる映画。レイプとその復讐が招く悲劇は、その題材や凄惨な描写はもちろんのこと、復讐に駆られた男の怒りと混乱を示すようにうねるカメラワークすら、苦手な人には目まいを起こさせるらしい。
ただ、逆回転するエンドクレジットから始まる徹底ぶりで、時間を逆行させるスタイルだけは、誰もが認めるはず。ストレートに時間を逆行させる、そのパワーに圧倒される快感! 時間を遡るほどに増す穏やかさが噛みしめさせる、幸福を取り戻せない切なさ! そう、このスタイルは、たんに目先を変える手段ではない。そこには、暴力の虚しさを暴力で突きつけるハートがあるのだ。
もともとバンサン&モニカ主演が大前提なだけに、ノエの生臭さは薄いものの、映画は広く観客に観られてナンボ。ノエのカルトな香りとこのスターカップルのオーラが溶けあった世界は、カルト映画とスター映画のいいとこ取りなのだ。オープニングから、その魅力に巻き込まれたら、きっとすべてが好きになる。ツッコミたいのは、裸よりも扇情的なドレスで美女が夜道をひとり歩きするってことだけ?!
(杉谷伸子)
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