「(『ザ・ロック』×『ダイ・ハード』)÷邦画十八番泥臭いドラマ…」亡国のイージス 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
(『ザ・ロック』×『ダイ・ハード』)÷邦画十八番泥臭いドラマ…
2005年に公開された福井晴敏原作の軍事アクション3本の中では、おそらく最も真打ち力作。
それは、キャスト/スタッフを見ても分かる。
メインキャストに、真田広之、寺尾聰、佐藤浩市、中井貴一、4人の名優が贅沢に並ぶ。脇も豪華面子が固める。
監督は阪本順治。音楽にトレヴァー・ジョーンズ、編集にウィリアム・アンダーソンがハリウッドから参加。
終戦60年の節目の年。内容も平和ボケした日本に反旗を翻す!
海上自衛隊の最新鋭イージス艦“いそかぜ”。
某国のスパイが乗り込み、それが若年海士の如月と知り、直属上官の先任伍長・仙石はショックを受ける。
が、実際は副長の宮津と某国工作員ヨンファによる乗っ取り。猛毒化学兵器“GUSOH”はすでに彼らの手中にあり、東京に照準が定められている。
彼らの目的は、海外で起きたGUSOHによる事故の公表、それを訴えた大学生の死の真相の公表、隠蔽した防衛庁情報局“DAIS”の公表。
全てはこの国への意義を問うた大学生が遺した論文“亡国のイージス”が始まり…。
DAISのエージェントであった如月はこの反乱を阻止する為、派遣されていた。
仙石も共に、いそかぜ奪還に挑む…!
国を守る者によるある理由を持っての国への復讐はさながら『ザ・ロック』。
主人公の孤軍奮闘は『ダイ・ハード』。
防衛庁、海自、空自協力。実際のイージス艦で撮影を敢行。リアリティー充分。
CGを駆使したイージス艦同士の海上戦。
艦内のスリリングな戦い。
邦画としてはスケールあるアクション大作!
…が、傑作には成り損ねた。
原作未読の者でも完全に映像化し切れてないのが分かる。途中途中、何を描きたかったのかだったり、展開が急だったり、ダイジェスト的だったり。
アクションと共に、国防の意義を問う。本当はそのどちらも巧みに描きたかったのだろう。ところが、国防臭が説教臭くなったかと思えば、ハリウッド風アクションを意識してるようでもあり、巧みに合わさっている感じはせず、どっち付かず。
その結果、ハリウッド風アクション×邦画十八番の泥臭いドラマで、一応頑張ったものの、よくあるチープな邦画アクションになってしまっている。
やはりエンタメに徹した洋画アクション『ザ・ロック』とはレベル違い。
阪本監督も同じポリティカル作品なら『KT』の方がずっと緊迫感あった。
キャストは熱演しているが、その中でも真田広之がある意味本当に“孤軍奮闘”に見える。本作を最後に16年日本映画に出ていない。国際スターになったのは誇らしいが、また日本映画への出演を。