「地球を調査する宇宙人」メルキアデス・エストラーダの3度の埋葬 kossyさんの映画レビュー(感想・評価)
地球を調査する宇宙人
序盤に時系列をいじってあるのなら、前もって教えてほしかった。おかげであちこちに出てくるトミー・リー・ジョーンズが地球を調査する宇宙人じゃないかと疑ってしまった・・・
スペイン語も自由自在のトミー・リー・ジョーンズ。今作品での彼はメキシコ人メルとの篤き友情もさることながら、一つの約束を守るためにかなり強引な方法でわが道を突き進むカウボーイだ。自分よりもかなり若いメルキアデスを殺された悲しみと、不法入国者であるというだけで人権を無視するアメリカ人を憎んでいるかのような性格を表に出すのです。とりわけ品行方性でもないけど、メルを故郷のヒメネスで埋葬するんだという一途な想いが伝わってきました。
友人を殺された恨みで短絡的に復讐するというのも一つの道だったのかもしれないけど、目的を果たすために犯人を殺すわけにはいかなかったのだ。自分の財産なんてのもどうなろうと知ったことじゃない。ロバや馬を失い、細かな経費さえ目的のためならば惜しまない。さらに国境警備隊の包囲網も突破しなければならなかったのです。
ロードムービーとなる後半。馬とロバと犯人と死体という不思議な組み合わせによって、とんでもないコースを辿る。途中、孤独な盲目の老人のエピソードや、ガラガラヘビの毒で死にかかった犯人を助けるくだりも面白い。そしてメヒネスという町は存在しない!という意外な展開で最高潮に達しました。
その他、犯人の嫁さんとメルキアデスの関係や、二人と不倫しているウェートレスとか、暴力の因果応報などといった複雑に絡み合う人間の面白さが秀逸でした。それにしても、親切なメキシコ人からもらったクマの肉はいつ食べたのだろう。死体と一緒に食べたのかな。そして、盲目の老人の行く末も気になるところですね。
【2006年7月映画館にて】