X-MEN:ファイナル・ディシジョン : 映画評論・批評
2006年8月29日更新
2006年9月9日より日比谷スカラ座ほか全国東宝系にてロードショー
アメコミの荒唐無稽な魅力を重視
「撮影開始後すぐ、この世界が独自の物理法則に支配されていることに気づいた」と言ったのは「スパイダーマン2」でDr.オクトパスを演じたアルフレッド・モリーナ。そうなのだ、アメコミ・ファンでなくても真摯に取り組めば瞬時に気づく。スパイダーマンがクモ糸でビルの谷間をスウィングするとき、その動きを支配するのは重力や空気抵抗ではなく、その律動がもたらす視覚的快感なのだ。この法則に立ち返ったのが本作。
監督は一時「スーパーマン・リターンズ」の監督候補だったブレット・ラトナー。本作を監督するはずだった前2作の監督ブライアン・シンガーは本作を降板、「スーパーマン・リターンズ」を空気抵抗重視で監督したが、ラトナーは本作を真逆の方向性で演出。悪の首領マグニートーの金属を操る能力が初稼働してサンフランシスコの金門橋を丸ごと動かすわ、ウルヴァリンをボールのように敵に投げつける荒技ファストボール・スペシャルが初登場するわ、アメコミの荒唐無稽な魅力を思いっきり増量。
「ミュータント能力=他者との違いとは治癒すべき疾患なのか?」という深遠な物語が痛快娯楽アクションになったのは、ラトナー監督の計算と資質の相乗効果に違いない。
(平沢薫)