劇場公開日 2006年10月7日

「本作を日本のこととして観ることが必要だと思います さもなければ、あのツインタワーのように、私達の文明社会は崩壊しかねないのです」ワールド・トレード・センター あき240さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0本作を日本のこととして観ることが必要だと思います さもなければ、あのツインタワーのように、私達の文明社会は崩壊しかねないのです

2021年8月31日
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鑑賞方法:DVD/BD

911からもうすぐ20年
今にして思えば21世紀の幕開けの号砲でした

バラ色の未来の21世紀は、いきなりバラバラに砕け散ってしまいました
21世紀は20世紀を上回る戦争の世紀になるのかも知れないのです
テロ戦争、イラク戦争、コロナ禍、米中新冷戦
もう冷戦終結の頃のような脳天気な時代は雲散霧消したのです

怒り狂った米国はテロ戦争に突入して、早くもアフガニスタンに2ヵ月後の11月には侵攻していました

そして20年
今日は8月31日
そのアフガニスタンから米軍は撤退を完了しました
その時のカブール空港での大混乱の様は、衝撃的なものでした

確かに911の首謀者ビン・ラディンは米軍特殊部隊による暗殺作戦で報復はなされました
しかしそれは10年も前、2011年のことでした
それからも米軍はアフガニスタンから撤退出来ずにいました

なぜなら撤退すれば、またテロの温床になってしまうと危惧したからです
親米政権を立て20年、もう大丈夫と思ったのでしょう
バイデン大統領のいうように永遠に戦争なんかできません
いつかは終わらせ無ければならないのです
その意味では正しい決断であったのかも知れません

しかし、ボウフラの湧くドブは掃除をやめれば、また害虫の巣窟になるしかないのです

本作は米国が20年に及ぶ、米国最長の戦争にのめり込んだ理由を教えてくれます
なぜ狂気のようにテロ戦争にのめり込んだのか?

それは恐怖です
こんな恐ろしいことが米国の中心で起きたのです
こんな事が二度とあってはならない
だからテロの温床を根絶やしにしようとしたのです

でもそれに失敗したのです
それがアフガニスタン撤退の意味です
つまり、いつかまた911が起きるかも知れません
本作の恐怖が再現されるかも知れないのです

日本は他人事?
米国の身勝手が招いたことでいい気味?

日本だって無関係ではないはずです
911では大勢の日本人も亡くなりました
テロの標的が日本になることすら有り得ます

サミュエル・ハチントンの名著「文明の衝突」そのものが起こっているのです

日本はアフガニスタンに莫大な援助を、資金や中村医師のような人道支援をしてきました
それでも、日本に協力したアフガニスタン人はその家族までタリバンから生命の危険に晒されています
そして日本は彼らの救出作戦を失敗してしまったのです

本作の恐怖、痛みを、日本人も自分のこととして捉え無ければならないと思います

東京で明日起こるかも知れないのです
そんな極端な、荒唐無稽なことを!と非難されるかも知れません

しかし911の前に、このような事が起きると予言しても誰も信じないし狂人のたわごとだと言われたはずです

本作を日本のこととして観ることが必要だと思います
さもなければ、あのツインタワーのように、私達の文明社会は崩壊しかねないのです

あき240