劇場公開日 2005年6月29日

「スピルバーグ、不覚の不発弾」宇宙戦争 マスター@だんだんさんの映画レビュー(感想・評価)

2.0スピルバーグ、不覚の不発弾

2012年8月3日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

単純

モーガン・フリーマンによるナレーションで始まるプロローグは古典SFっぽい雰囲気で、H・G・ウェルズの「宇宙戦争」をどう見せてくれるのだろうと期待が膨らむ。
「未知との遭遇」や「E.T.」といった人類に友好的な異星人との交流を描いた作品を送り出してきたスピルバーグが、宇宙侵略ものを手がけたのも興味深い。
太古から地球に埋められていたという攻撃機トライポッドのデザインが、むかし想像されていた火星人の姿に似ているところはSFファンとしてはニンマリするところだ。

この作品のトム・クルーズは、いつものスーパーマン的ヒーローではない。妻に離婚され、子供達からは軽んじられるダメ親父だ。そんな彼が子供たちを守ろうと必死に行動し始める。
だがトライポッドの威力は凄まじく、軍の攻撃も歯がたたない。世界のどこにもヤツらの攻撃を逃れる場所はなくなっていく。
さらに墜落したジャンボ旅客機や町の掲示板に貼られた無数の人探しの張り紙などが9.11の同時多発テロを連想させ、世界の混乱のピークを容赦なく描いていく。

ここまでは、その圧倒的な破壊力をスピルバーグらしいスピーディーな演出で突きつけられ、ILMによるVFXもそれに応えた映像を造り上げている。

ところが、この先が一向に盛り上がらない。
世界中が襲われていると言いながら描かれるのは特定の地域だけで、徐々にそのスケール感が貧弱なことに気がつく。
途中で現れるティム・ロビンス演じる農夫の怪しさも中途半端に終わり、最初にレイが落雷の現場で拾ったものもこれといった意味を持たない。拾ったものがヤツらにとって大事なもので、それを追って襲ってくるのかと思って見ていたのだが、それも意味不明のまま終わってしまう。反撃の切り札になぞなるべくもない。
おまけに、まさかのあっけないラスト。プロローグに伏線があったとはいえ、なんとも拍子抜けで素っ気ない。
貧弱でお粗末な脚本だ。
スピルバーグらしからぬ不覚の一作というしかない。

今にしてみれば、宇宙侵略モノは、このあと「スカイライン -征服-」(2010・監督:ストラウス兄弟)がただのモノマネで失敗を重ね、「世界侵略: ロサンゼルス決戦」(2011・監督:ジョナサン・リーベスマン)でやっと満足できる作品になる。

マスター@だんだん