ソードフィッシュ : 特集
2001年、VFX映画業界大変貌
VFX映画に造詣の深い映画評論家、大口孝之氏が激筆、今、大きく変わりつつあるVFXワールドをリポートする大特集! その第2回はティペット・スタジオの作品を中心に、この秋日本公開映画をチェックだ。そして、第3回からは、2001年のVFX映画界の勢力図を一望。スタジオごとに、現状と今後の展開を追う。
第2回:この秋の公開作はVFXスタッフが充実!
名人ティペット・スタジオの2作品が登場
CGとアニマトロニクスを比べてみると……
大口孝之
10月には、「スター・ウォーズ」の昔から「ジュラシック・パーク」シリーズまで活躍を続けるVFXの達人、フィル・ティペットのスタジオが手がけた作品が2作、相次いで公開になる。
まず、冒頭から最後までVFX満載のアイバン・ライトマン監督「エボリューション」。猛烈な速度で進化する宇宙生物が登場する作品で、膨大な数のクリーチャーがCGやアニマトロニクスで表現されている。
このCGをメインで手掛けたのは、クリーチャー表現では定評のあるティペット・スタジオ(サポートとしてSPI、PDI/ドリームワークスも参加)だ。クリーチャーたちは絶えず形を変化させる上、ライトマン監督の即興演出に、VFXクルーは相当手こずらされたと言う。
もうひとつ、ティペット・スタジオが参加したのは、この夏米国でスマッシュ・ヒットを記録したローレンス・グーターマン監督の「キャッツ&ドッグス」。やはりCGとアニマトロニクス、そして実際の動物たちをデジタル加工した映像を組み合わせて、犬VS猫の戦争を描いている。CGは、ティペット・スタジオ以外に、「ベイブ」(95)以降、動物ものでは定評のあるリズム&ヒューズなども参加し、骨や筋肉、皮膚、毛皮などを完璧にシミュレーションしている。
ただ素晴らしいCGの出来に水を注すのが、ジム・ヘンソン・クリーチャーショップのアニマトロニクスだ。それなりに精密な構造のモデルを用意しているのだが、どうしても人形っぽさが残ってしまう。そろそろCGオンリーで撮った方が、良い時代になったのではないだろうか。
また、この秋は、本格的なSF作品も2作ある。SF作品にはVFXシーンが不可欠だから、これらの作品のVFXスタッフも気になるところだ。
まずは、ゲイリー・フレダー監督の「クローン」(01)がある。「ブレードランナー」(82)や「トータル・リコール」(90)、「スクリーマーズ」(96)のフィリップ・K・ディックが原作で、今回も本物の人間なのか偽物なのかを巡って、主人公が逃亡を続けるパターンの作品だ。とは言え、やはりディックものは面白い。脚本も原作となった短編「にせもの」をうまく膨らませており、ラストも大きくひねってある。VFXはILMの他、「トータル・リコール」のメトロライト・スタジオなどが手掛けており、「2001年宇宙の旅」(68)のVFXスーパーバイザーであるコン・ペダースンもCGアニメーターと参加している。
そして、公開中の話題作、英国の人気ゲームを映画化した「トゥームレイダー」(サイモン・ウエスト監督)も、VFXが色々と凝っている。訓練用ロボットの“トレーニングドロイド”や、「シンドバッド黄金の航海」(74)の女神カーリーを連想させる動く石像など、見どころも多い。VFXを手掛けたのはミル・フィルムを中心に、シネサイト・ヨーロッパ、ムービング・ピクチャー・カンパニー、CFCなど、ロンドンのプロダクションが数多く参加している。アメリカのVFXプロの仕事ぶりと、比べて見るのも面白そうだ。
【次号予告】
いよいよ、次回からは、2001年のVFX映画界の勢力図を一望すべく、スタジオごとに、現状と今後の展開を追っていく。まずは、ILMやデジタル・ドメインをチェックするぞ。
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