「【自国ファースト及び全体主義が蔓延る現代でも十二分に伝わるメッセージを包含したアンチ独裁国家映画のエンタメ大作。400年経っても揺るぎない”V"の尊き”理念”が心に沁みる作品でもある。】」V フォー・ヴェンデッタ NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【自国ファースト及び全体主義が蔓延る現代でも十二分に伝わるメッセージを包含したアンチ独裁国家映画のエンタメ大作。400年経っても揺るぎない”V"の尊き”理念”が心に沁みる作品でもある。】
■独裁国家と化し、言論や思想が厳しく統制された近未来のイギリスが舞台。
外出禁止時間を破ったために秘密警察に拘束されかけた女性イヴィー(ナタリー・ポートマン:坊主頭になっての熱演である。)は、Vというマスク姿の男に助けられる。
独裁国家になってしまったイギリスを転覆しようとテロ活動を繰り返す彼に感化され、イヴィーも立ち上がるが…。
◆感想<Caution! 内容に思いっきり触れています。>
・ウォシャウスキー兄弟(後、姉妹)による脚本が秀逸である事は知ってはいたが、ここまで現代社会の行く末を見越した作品であるとは・・。脱帽である。
・1600年代、イギリスに実在した腐敗した国家を転覆させ、革命を起こそうとした英国では今やヒーローである”ガイ・フォークス”をキーとしながら、第三次世界大戦後の、独裁国家になってしまったイギリスを支配する愚かしきサトラー議長の姿を絡めながら物語は進む。
フェイクニュースしか流さない、国営放送。現代の幾つかの独裁国家と全く同じである。
ー 容易に想像が付くサトラー=ヒトラー。そして、絶対的権限を持つ彼の下で”甘い汁”をすすっていた政府の幹部たち。ついでに、現代ロシアを統べる愚かしき男を追加すべきであろう。-
・そこに、地獄から蘇った”V”が現れる。彼はサトラーに諂い甘い汁を啜っている政府幹部や、且つて自分を含めたウイルス実験に関わった者たちに、”血の報復”をしていく。
ー 政府により、人口増加を抑制するために、秘密裏に意図的にウィルスの実験が行われた中で、奇跡的に生き延びた男”V"。
劇中描かれる、ウィルス実験により死んだ人々を穴に放り込むシーンは、正にアウシュビッツそのものである。-
・両親を反社会的存在とみなされ、独裁国家に虐殺されたイヴィーが、煩悶しつつも徐々に”V"の思想に傾倒していく様。
ー それは、”V"が意図したものであったが、彼女が獄中で読んだ、同性愛者であるという理由だけで獄死した女優ヴァレリーの手記。
今作は、様々なマイノリティーたちへの思いを込めた作品でもある。-
<ラスト、”V"と同じ仮面を付けた多数の市民たちが、国会議事堂に集い、”V"が決死の思いで仕掛けた地下鉄爆薬により、旧弊の象徴であった、議事堂は崩れ落ちる。
今作は、娯楽大作としても一級品であり、且つ真の自由や正義を深く重く追及した、メッセージ性溢れる作品なのでもある。
ナタリー・ポートマンの熱演も含め、見事の一言である。>