「バニラ色した世界。人生を生きるとは。」バニラ・スカイ とみいじょんさんの映画レビュー(感想・評価)
バニラ色した世界。人生を生きるとは。
理想の中に挟み込まれる悪夢。
自分が本当に望むものに向かうための潜在意識。
はまる人ははまる。
見返す度に、気づきがあり、考えさせられる。
「選択」ー自分の人生は自分で選ぶ。
この先にあるのは、希望か絶望か。
それでも、ラストのデイビットが下す選択を応援したくなり、勇気をもらえる。
1回目日本語字幕で視聴。視聴後、気持ち悪くなった。
遊園地のアトラクションでグルグル振り回されてかき回された感じ。ディビットの真っ白い仮面に毒されたらしい。顔がグチャグチャになった特殊メイクより気持ち悪かった。何もかもが、白い仮面をかぶせられた人生のような気がしてきて、泣きたくなったのに、泣けなかった。自分自身であるという実感が持てなくなったような気に押し潰された。
2回目日本語吹き替えで視聴。ちょっと余裕が出てきたからか、役者さんの表現に圧倒された。
キャメロンディアスさんが演じているジュリーの切ないこと。ディビットの誕生日パーティで、ディビットとソフィアを見つめるあの表情。こみあげてきた。他のレビューではジュリーの狂気に焦点が当てられているものが多いが、恋する表情が良い。ただのエキセントリックなだけの女性ではない。抱きしめたいよ。
対して、ペネロぺクルスさん演じるソフィア。かわいらしくて元気いっぱいで、恋する喜びに輝いていて。そして時に聖母。見ているだけで幸せになれる。
勿論、トム様も秀逸。1回目で気持ち悪かった白い仮面の場面も、仮面被っているのに、細やかな感情が読み取れる。やっぱりすごい演技力。
このお三方もすごいが、何気に豪華キャスト。ラッセル氏、スポール氏、テイラー氏、スウィントンさん…。
DVDに付いている監督の解説を拝聴した後、もう一度視聴。
ああ、ここはこういうことだったのね。ここでこうするか?
チャーリーズエンジェル VS イーサン・ハントって(笑)。そんな笑える場面じゃなくて、もっと狂気と緊迫感と切なさと悲しみに満ち溢れた場面なんだけれど…。
DVD解説付きで良かった。2倍3倍楽しめる。観方が深まる。でも全てが解説してあるわけではないから、つい監督に電話して尋ねたくなる。
ディビットの人生は全てを手にして人生を謳歌していたはずなのに、どこかで自分の人生を生きていなかったー離人感ー(バーチャル)感じが漂っていた。
だのに、〇〇して〇〇の方が、リア充というか現実味が増す。
正直オチはそうくるかと納得できないところもあるけれど、その対比が見事。
バニラスカイは、最近はやりの屋内に仮想の空を造るあの空と同じで気味が悪かった。
すべてを真綿・バニラで包んだ心地よい夢想世界の象徴。
自分の足で大地に立つって…。
こういう主題をバニラ色に染め上げて表現した監督に乾杯。エンディングに流れるポールマッカトニーさんの曲もその雰囲気をさらに高める。
甘い題なのに甘くない。自分自身の人生って何なんだろうと考えさせられる作品。
(『Abre los ojos』は未見)