ヴァン・ヘルシング : 特集
ヴァン・ヘルシング超研究
編集部
さて、本作の背景的な部分の研究が終わったところで、次はいよいよ「ヴァン・ヘルシング」作品内の世界について突っ込んでみよう。
【研究2】ヴァン・ヘルシングの正体にまつわる謎
■過去のない男
本作の主人公ヴァン・ヘルシングは、ある夜、バチカンの教会の前に倒れていたところを救われたという過去を持ち、それ以前の記憶を失っており、謎に包まれている。「お前が行き倒れになっているのを見て、私は神の仕事をする男だと確信した」「お前は過去の罪の代償として記憶を失ったのだ」と、バチカンの枢機卿は彼に向かって言うが……。
■宿敵ドラキュラ
今回、ヴァン・ヘルシングが帯びた使命は、東ヨーロッパのトランシルバニアを支配するドラキュラ伯爵を倒すこと。しかし、ヴァン・ヘルシングと対面したドラキュラ伯爵は「久しぶりだな、400年ぶりか」「貴様は偉大なヴァン・ヘルシング。チベットからイスタンブールまで修行を積んだ。今はバチカンに守られているが、世界から追われる存在でもある」と言う。2人には深い因縁があるようだが……?
■カール
修道僧にして、武器開発の天才カールは、本作で意外な謎に迫るキー・キャラクターだ。彼はヴァン・ヘルシングに伴ってドラキュラ退治の手助けをするが、その中である謎に突き当たったとき、ヴァン・ヘルシングの記憶の一端に触れる。その時ヴァン・ヘルシングは、「マサダでローマ軍と戦った」と言うが、これが歴史でいうマサダの戦いなら、それは西暦73年のことになる。ローマ帝国の圧政に耐えかねたユダヤ人が反乱を起こし、マサダにある要塞に立てこもって1万人の敵と戦い、最終的には集団自殺したというものだが……。
【研究3】ドラキュラ伯爵とヴァレリアス家に関わる謎
■ドラキュラ伯爵
ドラキュラ伯爵のモデルは「串刺し公」と呼ばれ、トルコの軍勢から祖国を守った勇猛なルーマニアの君主ヴラド・ツェペシュ公。ブラム・ストーカーが作り上げたドラキュラ伯爵も同じようなシチュエーションで愛する人を失い、神を憎み悪魔と契約して不死の男になるという設定。本作におけるドラキュラ伯爵は、1432年に生まれ、1462年に「神の左」(聖書において神の左に座することを許された大天使ガブリエルのことと思われる。天使の階級のうち最上位に位置する熾天使の1人で、マリアへの受胎告知や、ソドムとゴモラの破壊を行った天使であり、また、一度天界から追放されたこともある)によって殺されたという。彼はその後悪魔と契約をかわし、不死を手にしている。彼はヴァン・ヘルシングに言う。「俺は自由になった。お前も望めばなれる」
■ヴァレリアス家
本作のヒロイン、アナ王女は、ドラキュラと戦い続けるヴァレリアス一族の末裔。しかし、彼らには呪われた一族でもある。アナ王女の兄、ヴェルカンも、狼男に噛まれて自身が狼男に変貌してしまうという悲劇に見舞われたばかり。この呪いの家系も、ドラキュラ伯爵が吸血鬼になった瞬間からはじ始まっている。ヴァレリアスの長老は、「ドラキュラを葬り去るまで我が一族は、決して天国にはいかない」とバチカンに誓いを立てる。その真意はどこにあるのか?
【研究結果】
こうして見ると、この映画のストーリーは複雑怪奇、原作の「吸血鬼ドラキュラ」はじめとした往年のユニバーサル映画の要素はもちろんだが、自分の正体を知らない主人公は「デビルマン」を思わせるし、ヴァレリアス長老の9代に渡る呪いの構造は「八ツ墓村」のようでもある。
世界屈指の特撮工房ILMが生み出した驚愕映像に目を見張るもよし、「インディ・ジョーンズ」ばりの本格アクション・アドベンチャーに胸躍らせるのよし。しかし、ひとつだけ言えるのは、ちょっと深読みするとまた違った面白さが見えてくるということだ。その謎は、きっと続編で明らかになる……はず?
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