テルミン : 特集
ダークサイド・オブ・テルミン
■■■■■ただ者ではないテルミン愛好者たち■■■■■
編集部
映画を見ているだけでは分からないが、テルミン愛好家はなぜかダークでマジカルなものに憑かれているヤツが多い。映画に登場した人物を中心に気になるダークサイドをチェックしてみると───。
ブライアン・ウィルソン
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みんなが知ってるビーチ・ボーイズのリーダー。映画で聞けるこのバンドの大ヒット曲「グッド・バイブレーション」のサビのテルミン使いは有名。でも、映画で何かに憑かれたように熱弁するウィルソンが、メンバーとの対立でバンドにハジキされてドラッグハマリした過去をもつことは、知らない人もいるだろう。その時期、メンバーがツアーに行ってる間にひとりでスタジオにこもり、初めてテルミンを使ったアルバム「ペット・サウンズ」を録音、使った曲の邦題が「駄目な僕」。その後、ウィルソンはテルミンを多用したアルバムを2枚作る。この時期、彼の家に出入りしてたのが、あのチャールズ・マンソン。ロマン・ポランスキー監督の妻だったシャロン・テイトらを惨殺した男だ。マンソンは、ウィルソンの兄、デニスと親交があり、当時はやりのシンガー・ソング・ライターの真似もしていた。さらに、ブライアンのスタジオで録音もしていて、デニスがマンソンの曲をシングルB面に収録したこともある。マンソンのビートルズ好きは有名で、「ヘルター、スケルター」のお告げで惨殺を遂行したと語っているが、ビーチ・ボーイズともこんな接点があったというわけだ。スティーブン・ゲインズ「ビーチ・ボーイズ リアル・ストーリー」(早川書房)にも詳細がある(ちなみに、マンソンの曲をカバーしたバンドは数多く、ガンズ・アンド・ローゼズ、ソニック・ユース、サイキックTVらも演奏している)。
トッド・ラングレン
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映画ファンにはリブ・タイラーの「育ての父」として知られるこの人もテルミン愛好家。映画ではテルミンを「口まね」してみせるキュートなオヤジだ。彼の周辺からは「音の魔術師」という異名以外に、ダークな魔術系の噂は聞こえてこないが、バンド「ユートピア」のアルバムジャケには、ご覧のような呪術的なフリーメイソンふうデザインが(写真)。そして、このバンドが70年代に共演してたレッド・ツェッペリンには、テルミン愛好家で黒魔術好きのギタリスト、ジミー・ペイジがいた。
ジミー・ペイジ
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泣く子もだまる、レッド・ツェッペリンのギタリスト。彼がライブ・ドキュメンタリー「レッド・ツェッペリン/狂熱のライブ」で演奏する姿でテルミンを初めて見た人も多いはず。ペイジは黒魔術愛好家としても有名で、魔術師アリスター・クロウリーが実際に住んでいた館に住み、そこでツェッペリンのドラマーが変死したときにも、黒魔術との関連が話題になったほど。近年はブラック・クロウズと共演し、まだまだご隠居でないところを見せたが、ブラック・クロウズもまたテルミンを使う(ボーカリストのクリス・ロビンソンが「あの頃ペニー・レインと」のヒロイン、ケイト・ハドソンと結婚したのも、映画ファンには記憶に新しいところ)。
トレント・レズナー
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クロウリーの館に住むのがペイジなら、チャールズ・マンソンがシャロン・テイトを惨殺した屋敷を買ったのがレズナー。彼のバンド、ナイン・インチ・ネイルズもテルミンを使う。彼がプロデュースしたマリリン・マンソンが、チャールズから名前を取ったのは有名な話だが、そのマンソンが最近、映画音楽を担当したのが、全米で10月に公開される「フロム・ヘル」。切り裂きジャックのドラマを、ジョニー・デップ主演でアレン&アルバート・ヒューズ兄弟が監督。なぜかダークサイドに縁がある感じ。そういえばレズナーには、デビッド・リンチ監督「ロスト・ハイウェイ」に曲を書いて、本編では使われなかったという暗い過去が(余談だが、マリリン・マンソンは、日本のフィギュア・メイカー、フューチャーモデルズ製造、レッズ販売で9月からフィギュアが登場する)。
とはいえ、今やテルミンは、暗黒バンドに使われるよりも、さまざまなバンドがいろんな味に使い分けているのが現状。アメリカではフィッシュやマーキュリー・レヴ、アップルズ・イン・ステレオなどエレファント6勢、イギリスではアニマルハウスやアド・エヌ・トゥ・エックス、ポーティスヘッドなどなど、例をあげればキリがない人気楽器だ。