めぐりあう時間たちのレビュー・感想・評価
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タイトルなし
ヴァージニア・ウルフの「ダロウェイ夫人」がダロウェイ夫人の一日を描いていたと同じく、三人の女性のそれぞれの特別な一日を描く。ヴァージニア・ウルフその人が自らの命を絶つ一日、1950年代のアメリカの一主婦が家を(子供を)捨てる一日、レズビアンの女性がかっての夫であったゲイの男友達を失う一日。そして全編に漂う水のイメージ、レズビアンのモチーフだろうか。満足度はもう一つだが、三人の主演女優はみんな好演。でも、最もしどころのない(派手な見せ場のない)役である主婦役を説得力を持って演じ上げたたジュリアン・ムーアが一番か。
理想の女性像を追い求め
時代の変化を感じさせる見事なストーリー構成。3つの異なる時代だが、次第に女性の権利や自由が認められるようになっていくという流れはとても良かった。女優も三人ともオスカー受賞の名演技出し、死というものを通じて女性が自分らしさを追い求めるとてもいい濃厚ないい映画やた。
最高に好きな作品
日常の小さな出来事が、心を傷つける。でも明るく前向きに、自分の人生を見つめる。
3人の女性の人生を描き、繋げる演出は芸術的。
沢山の選択があるからこそ、自分で選び進まないといけない、そう覚悟させてくれる映画です。
266-58
2017年最後。
ヴァージニアウルフについて勉強している身なので多少は知識がありましたが、とにかく難解でした。異なる時代で異なる人が自分の生き方をしていこうともがく話でいいのだろうか。いつの時代も自分が自分として生きていくのは並大抵の努力でどうにかなることではないのだと学んだ。
ニコールキッドマンとジュリアン・ムーア、はまり役だったと思います。
(映像3 脚本4 演出3 音楽2 配役5)×4=68
異性愛者にはわかりづらいはずなのに
3つの時代が交錯するわかりづらい映画で、監督がバイセクシャルで原作者が同性愛者(ゲイ)であるのが影響しているとしか思えないが、物語中にも同性愛者またはバイセクシャルが数人出ている。そこからしても私というフィルターをを通してからはこの映画は良くわからない映画として評価はできなくなる。善悪というよりわからないとするしかないだろう。複雑である。交錯しているうちに3つの時代が収斂していくが、同性愛やバイセクシャルの複雑さとともに、死の願望やノイローゼというような、不安定な心理が加味されて、同性愛者またはバイセクシャルが、悲劇を伴うところ、哀しみを抱いているところが、評価は私としては出来ないとしても、軽薄ではない。未亡人になった女は死んだ同性愛者の夫人であり、夫が死病の感染症になっても揺らがずに沿う。だがその夫人も同性愛者であったようだ。死後に訪ねてくるのは、同性愛を夫に隠してきた老婦人である。老婦人は同性愛の複雑さから自殺を企てるが生きる事を選ぶ。その子である男も同性愛になるが、それがもとなのかエイズが隠喩的に語られているのか、エイズで衰弱したことがもとで、投身自殺する。そして、その男を介して出会った二人の女が向かい合う。私にはこの映画がどうしてアカデミー賞などをいくつも受賞した作品になったのかはわからない。同性愛者やバイセクシャルにとっては、そうした人たちを美化するような意味合いを持つのだが、異性愛者が大勢なはずの社会の中でこの映画をどうしてトップに置いたのか。ヴァージニア・ウルフに至っては、普通に誠実で良い夫を持ちながら、入水自殺をしてしまうという精神不安定を抱えた人である。やはりどうしてこの映画が賞を数々受賞したのか、何を言いたかったかを、何事かを理屈づけて語ってはいたが、私には良くわからない。ただ、生き残る者もあれば、悲劇に終えるものもあるというのは、関係者たちは救われようとしているのだと感じさせる。ふざけて同性愛者やバイセクシャルをしているわけではないのか。だが私としては異性愛が人間の基本なのだと付け加えるしかない。単純に開き直りも通り越したような明るい映画にしていなかったところが気にかからせる。
「幸せ」は主観でしかわからない
3人の女性達、全員、客観的には幸せ。理解ある夫orパートナーがいて、子供がいたりもするし、生活苦でもない。3人は産まれた年代が違い、世間が保守的だった時代の2人は同性愛に気付いてもどうしようもなかったが、3人目はそれもオープンにパートナーを持つこともできていて、精子提供で子供まで持てている。それでも3人とも、気持ちの面で晴れない。
1人目は作家、ダロウェイ夫人を執筆中。支えてくれる夫もいるが精神的には不安定で、なんとなく子持ちの妹に恋愛感情がある。ダロウェイ夫人の展開をどうするか迷いながらも書き上げたものの入水自殺。
2人目は専業主婦、長男に続き長女を妊娠中。豊かに暮らせるだけでなく、優しい夫がいるが、生き生きした感情を持てない毎日。ある日近所の友達の婦人科系の病気を慰めようとして、ふと同性愛にも気付く。ダロウェイ夫人を読書中。結局その後、2人の子供を残して家出しカナダで職を得て1人で生活する。
3人目はオシャレな女性同性愛者でパートナーも娘もいる。今は毎日会う男友達だが、その男性と若い頃に付き合っていた時が幸せのピークだったと感じている。男友達もそう思っていて、精神的に不安定な生活の末、目の前で飛び降り自殺。彼は2人目の女性に捨てられた長男だった。
激動の3人の人生をシャッフルしながら観て、感じた事。客観的な幸せと、主観の幸せは違うということ。そして、家族や周りを幸せにする事が、必ずしも本人にとっては幸せとは限らず、周りを捨てて不幸にしてでも、本人が幸せになれる事もあるということ。周りには理解できない幸せもあるということ。
何より、周りがどれだけ理解しサポートしてくれていたとしても、恵まれていたとしても、かえって息苦しかったりして、イキイキした生命を生きる感情は自分自身にしか作り出せないということ。
イキイキ生きられていない場合、死ぬまでの時間を過ごしているに過ぎなくなってしまう。自分にとっての幸せな生き方はなんなのだろうと問いかけられた作品。
大きく浮上するために、大きく沈みたいときに。
どうしようもなく不幸な気分で、寄り添ってくれる何かを求めている時に観たくなるような映画。
冒頭から、鈍い痛みをずっと与え続けられるような、底無しに少しずつ沈んでいくような気分になる。
人生に望むことをわかっていない、もしくはぼんやりと解っていたとしても上手にそれを求めて生きる術を持っていない。
だから人の期待に流されるままに生きてしまった。
そんな女性達のお話。
でも、少し視点を変えると、不幸に依存して安心を得ている。
実は幸せな生き方、と、見ることも出来そう。
登場シーンは少しだけれど、キュートなクレア・ディーンズのちょっとした優しさにとても癒される。
全体的にネガティブな雰囲気の内容だからこそなのか、子供達の笑顔や思い遣りがとても光って見えて印象的。
病んだ女性たちの映画。登場人物のほぼほぼ全員が病んでいるので、こっ...
病んだ女性たちの映画。登場人物のほぼほぼ全員が病んでいるので、こっちまでおかしくなりそう(笑)世の中、病める人間ばかりということか、そういや実家の隣のおっさんも…やめておこう。
登場人物の心情は正直全く理解できない。女性なら共感できるのだろうか?女性はわからん。だからモテないんですね(笑)
本作で学んだこと。病める女性は女性に激しく接吻する。
女優陣の演技がお見事。作品を重厚な雰囲気に仕立て上げている。
明るく元気に過ごしたいものです。
流れる時間と意識を断つ死
昔初めて観た時に感じた、何とも言えない息苦しさが鮮明な記憶として残っており、再鑑賞。ようやく言葉として表現できる気がします。
絶え間なく流れる時間を意識させつつ、自由と抑圧、叶わぬ愛、生と死を通して、"Mrs. Dalloway"という劇中にも登場する小説のように、各女性の人生とその結末を象徴する1日を切り取るような形で描いています。
1923年 Richmondで静養中の作家Virginiaは、"Mrs. Dalloway"を執筆中。
1941年 Sussexにて夫宛に遺書を残してVirginiaは川へ身を投じる。
1951年 LAで"Mrs. Dalloway"を愛読するLauraは二人目を妊娠中。
2001年 NYで元彼Richardに"Mrs. Dalloway"という愛称で呼ばれるClarissaは、Richardの受賞パーティ開催に奔走する。
ネタバレするとRichardはLauraの長男。
幸せの形は人それぞれですが、人によっては他人にその幸せの拠り所を求め、ひたすら「幸せの押し売り」をしてしまいます。例えば、Leonardは妻Virginiaの静養に「良かれと思って」LondonからRichmondへ引っ越し、Danは自分にとっての典型的なアメリカンドリーム、「幸せな家庭」を築き上げることで妻Lauraも幸せだと信じており、Clarissaは、過去最高に幸せな1日をくれた元彼Richardから長年離れられず、本人が望まないパーティを計画します。善意を押し付けられている側はどうかと言うと、田舎で暮らすぐらいなら死んだほうがマシ、都会のLondonに戻りたいと泣くVirginia、息子を捨て胎児と共に自殺を試みるLaura、Clarissaを満足させるためだけに生きているんだと、AIDSに苦しみ自殺するRichard。
押し付けている側が身勝手かというとそうでもなく、そこには彼らなりの確かな愛があります。その愛が全く伝わっていない訳ではなく、Virginiaは遺言で夫に感謝し、Lauraは自分の望む人生を選んだだけだ(少なくとも憎んでいる訳ではない)と言い、RichardはClarissaに愛を伝えてから飛び降ります。
これら3つの時代の鍵となる"Mrs. Dalloway"という主人公を創り上げる作家Virginia Woolfがどういう人物かというと、精神を病んで生と死に高い関心を抱いています。
"My life has been stolen from me. I'm living a life I have no wish to live."
そしてどんな人間も自身の人生の処方箋に意見できるはずだと主張します。
"The meanest patient, yes, even the very lowest is allowed some say in the matter of her own prescription. Thereby she defines her humanity."
実際の小説内の"Mrs. Clarissa Dalloway"は、伝統的な階級社会を重んじて下流階級を軽蔑しつつも、先進的な考え方の女性に惹かれるという、上流階級の英国女性です。NYのClarissa Vaughanと同じように、パーティの準備に追われながら、過去に想いを巡らせ、些細なことを気にする姿が書かれています。この映画の中では、社会的には成功し自信に溢れて見えるが実はそうではない、とLauraが述べています。NYのClarissaと同様に、傍目には何不自由なく、理想的な幸せ(仕事や地位、パートナー、娘)を手に入れているように見えても、「沈黙を隠すパーティ」のように、所詮うわべだけで、過去に囚われ中身のない「生」を生きている人なのです。
そしてClarissaだけでなく、主要登場人物は全員、渇望したものが手に入らずに苦しみます。都会の喧騒、子供、自由、家庭、母、最愛の人…。不妊で悩むKittyの言葉にそれが表れています。"All my life I could do anything except the one thing I wanted."
突然の訪問客、予定より大幅に早く到着する来客に象徴されるかのように、人生において全て計画通り、思い通りにいくことはないでしょう。では人生の「時間」を期待通りに過ごせない場合、彼らはどうするのか。Virginiaの言うように、各自が決断する権利を持つならば、彼らは人生とどう決着をつけるのか…。
Virginiaは夫との年月、夫の愛に感謝しつつ、生を捨てて死を選びます。RichardもVirginiaと同じ最期の言葉を残します。"I don't think two people could have been happier than we have been." 過去に幸せな時間は流れたものの、未来に幸せを期待できずに死を選ぶのです。
Lauraはおとなしく従順に見えますが、全く主婦業には向かない女性です。レシピを追っても失敗するケーキ作りやその毒々しい色合いにも表れています。一人静かに読書をしていたいタイプなのです。よって彼女は家庭を捨てて自由を得たことに後悔していません。彼女にとって結婚生活は死であり、家族と歩む「死」よりも自分一人の生を選択するのです。そんな彼女を最後に抱きしめるClarissaの娘Juliaの温もりに、愛とは本来心地良いものであることを感じ取ったでしょうか。
かつて幸せなひと時を共に過ごしたRichardと一緒でなければ生きている気がしないとまで言っていたClarissaは、長年連れ添ったパートナーSallyに今一度向き合い、未来に幸せを見出すため、真に生きることを決断したように見えました。
どよ〜んとした話で、表面的にはウツにしか見えない内容かも知れませんが、"Mrs. Dalloway"そのものだったClarissaが、自分の周りに存在していた「その他」の愛に感謝し、未来志向に転換するという、実は極めて前向きな結論のお話なのだと思います。
同性愛については、Mrs. DallowayやVirginia、Lauraの時代ではタブーとされているも、ClarissaやRichardの生きる現代では解放された価値観に進化したと言えます。
ひとつひとつの何気ない台詞、何気ない行動に、言わんとすることが凝縮されており、受け取る側でそれらを繋げていく必要があります。Virginia Woolfの原作、それを基に著作されたこの映画の原作の両方を理解していれば、すんなり入ってくる内容なのかも知れません。観客を試す作品であり、観る人を選びますが、3人のオスカー女優の演技は言うまでもなく素晴らしいです。今の自分にはこんな風にしか解釈できませんでしたが、違うライフステージで観れば、また異なる気付きを与えてもらえそうです。
Virginia:
"Someone has to die in order that the rest of us should value life more. It's contrast."
"You cannot find peace by avoiding life."
"To look life in the face, always, to look life in the face and to know it for what it is. At last to know it, to love it for what it is, and then, to put it away. Leonard, always the years between us, always the years. Always, the love. Always, the hours."
Dan:
"The thought of this life, that's what kept me going. I had an idea of our happiness."
Laura:
"There are times when you don't belong and you think you are gonna kill yourself."
"What does it mean to regret when you have no choice? ... It was death. I chose life."
Richard:
"We want everything, don't we?"
"I'm only staying alive to satisfy you."
Louis:
"The day I left him... I felt free for the first time in years."
Clarissa:
"There was such a sense of possibility… I remember thinking to myself; so this is the beginning of happiness, this is where it starts. And of course there will always be more… Never occurred to me it wasn't the beginning. It WAS happiness. It was the moment, right then."
暗かった
なんか、最終的に感動して終わるのかと思ったけど、
最後の最後まで悶々としてる感じ!笑
キスの意味とか、いろいろと説明してくれない、暗に示すとこが多くて、もやもやした!笑
つながるとこも、繋がってんのか繋がってないのか、
結構全体的にはっきりしてない!
私達ほど幸せな二人はいない
リチャードが窓から飛び降りる時に言ったセリフです。
ぎゅっと胸が締め付けられました。
苦しくて、苦しくて、苦しくて。
愛に生きた、愛に努力した、愛に挫折した、愛に救われた、三人の女のストーリー。
鬱
1920年代、1950年代、2000年代と時代を交差する作りで、3人の女性の人生を描いていく物語。イギリス映画らしいくすんだフィルムも鬱々とした内容にマッチしていました。
彼女達が持つ「憂鬱」は、どんなに幸せに「見えた」としても他者に分かるものではありません。そう家庭を持ち、子供を持ち、仕事を持ち、経済的に恵まれていたとしても。
子供を持ったことに対して「幸せな女性ね」と言われ、微妙な表情をするローラ。数十年後に同じセリフをクラリッサに向けていうローラだが、クラリッサもまた眉をひそめて怪訝な顔をする。
この様に生に対して前向きになれない感情が多く含まれているので、分かる人にしか分からない哲学性があります。前向きさは意味を成しません。
「すべてのことがくだらなく感じるの」
「この先もっと幸せが訪れると感じた瞬間こそが最も幸せ」
「人生を奪われたのよ」
「人生から逃げたまま平和は得られないわ」
鬱々とした中でも人生を諦めずに、自己を突き抜ける女性達に、なまじの前向きさよりも大きな何かを貰えた気がします。
それにしても、ニコール・キッドマンは誰だか分からないです。女優凄い!
心の闇
無茶苦茶 久っさし振り、持ち合わせの DVD にて観賞◎
私の記憶が確かならば、pamphlet も持っている事やし、我が初回は劇場で観た筈である、きっと。
登場する3人の主役は、時代・国は違えど、各々が心に病(傷)を持ち、且つ それに全身全霊で翻弄されている。
で、3人を繋ぐのが Nicole Kidman 演じる Virginia Woolf の小説「ダロウェイ夫人」である。
「ダロウェイ夫人」の内容の如く、3人の女の一日が、同期して転がって行く。
破綻しそうで しない3人の行動━━。
観客の心に鑢はギリギリと掻けられる…。
本作だけで すっかり虜に させられた Stephen Daldry 監督の手腕も然る事ながら、やはり Virginia Woolf の心の闇に、私は惹かれてならない。。。
悪くないが、何故苦悩するのかをもう少し描いてほしい
総合:70点
ストーリー: 65
キャスト: 85
演出: 65
ビジュアル: 70
音楽: 65
自分を見失って精神的な苦悩を持つ女たちやその周囲の人々を描く。
三つの物語はそれぞれに面白そうなのだが、分散してしまったがゆえに何故彼女たちがこれだけ苦悩するのかがわかりにくい。
例えば二番目のローラの場合、良い家庭に恵まれながら、何故彼女は幸せを感じることがなく違和感を覚えるのかというような描写がない。ローラが登場したときには、すでに彼女はもう自分を見失い自分の人生が何かとか幸せとは何なのかがわからなくなっている。そのためその後自殺を図ろうとするのは、前のヴァージニアの話と物語の整合性を合わせるためだけのように感じる。背景を良く説明しないままに結論だけを持ってこられたという感じが少しある。もうちょっとそのあたりを詳しく描いてほしかった。
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