「「幸せ」は主観でしかわからない」めぐりあう時間たち MAPLEさんの映画レビュー(感想・評価)
「幸せ」は主観でしかわからない
3人の女性達、全員、客観的には幸せ。理解ある夫orパートナーがいて、子供がいたりもするし、生活苦でもない。3人は産まれた年代が違い、世間が保守的だった時代の2人は同性愛に気付いてもどうしようもなかったが、3人目はそれもオープンにパートナーを持つこともできていて、精子提供で子供まで持てている。それでも3人とも、気持ちの面で晴れない。
1人目は作家、ダロウェイ夫人を執筆中。支えてくれる夫もいるが精神的には不安定で、なんとなく子持ちの妹に恋愛感情がある。ダロウェイ夫人の展開をどうするか迷いながらも書き上げたものの入水自殺。
2人目は専業主婦、長男に続き長女を妊娠中。豊かに暮らせるだけでなく、優しい夫がいるが、生き生きした感情を持てない毎日。ある日近所の友達の婦人科系の病気を慰めようとして、ふと同性愛にも気付く。ダロウェイ夫人を読書中。結局その後、2人の子供を残して家出しカナダで職を得て1人で生活する。
3人目はオシャレな女性同性愛者でパートナーも娘もいる。今は毎日会う男友達だが、その男性と若い頃に付き合っていた時が幸せのピークだったと感じている。男友達もそう思っていて、精神的に不安定な生活の末、目の前で飛び降り自殺。彼は2人目の女性に捨てられた長男だった。
激動の3人の人生をシャッフルしながら観て、感じた事。客観的な幸せと、主観の幸せは違うということ。そして、家族や周りを幸せにする事が、必ずしも本人にとっては幸せとは限らず、周りを捨てて不幸にしてでも、本人が幸せになれる事もあるということ。周りには理解できない幸せもあるということ。
何より、周りがどれだけ理解しサポートしてくれていたとしても、恵まれていたとしても、かえって息苦しかったりして、イキイキした生命を生きる感情は自分自身にしか作り出せないということ。
イキイキ生きられていない場合、死ぬまでの時間を過ごしているに過ぎなくなってしまう。自分にとっての幸せな生き方はなんなのだろうと問いかけられた作品。