「「大いなる力には、大いなる責任が伴う」」スパイダーマン2 桜さんの映画レビュー(感想・評価)
「大いなる力には、大いなる責任が伴う」
「スパイダーマン」に引き続き、この作品も改めて書いていく。
前作のレビューをまだ読んでない方は、是非。
スパイダーマンは数多く映画化されてきたが、ここまでヒーローの実情をリアルに描く作品は、このサム・ライミ版スパイダーマンだけだ。
ヒーローをしていると、愛する人の傍にいれないだけでなく、お金もなくなっていく。
序盤から、バイトのピザ屋をクビになり、一人暮らしの家賃もロクに払えず、カメラマンの代金ですら前借り分も返せず、散々。
メイおばさんもお金に困っており、それでも泣きながらピーターにお金を渡すシーンは何度見ても心が痛む。
MJの事も振ったもんだから、新しい彼氏をいつの間にか作り、ハリーはずーーーっとピーターに父の仇であるスパイダーマンの居場所を聞き続ける始末。
ピーターはそんな中大学の授業にもロクに出られず、落第寸前。
これこそまさに、ベン伯父さんが言っており、私がこのレビューのタイトルに選んだ「大いなる力には大いなる責任が伴う」という言葉の通りである。
ヒーローであることがこんなにも辛いなんて。
何をやっても空回り。ヒーローであればあるほど、日常生活が何も上手くいかない。
ピーターは苦悩する。
こんな苦悩の内側をまざまざと見せつけてくるヒーロー映画が他にあるだろうか?
見てるこっちも辛くなるようなシーンしかない。
そんな中、ドクターオクタビアス博士が、自身の夢である核融合に挑戦。
結果はあえなく失敗。それどころか、そのせいで事故が起き、妻も失ってしまう。
オクタビアスは「もう止まれない」と、もう一度大きな核融合を起こす為にめちゃくちゃし出す。
ピーターもそれどころじゃないけどたまたま人質になっちゃう伯母を救い、街も救う。
だが、MJとの唯一の約束すら果たせず、完全に失望させてしまう。
ピーターは何度も何度も言いたくなる。僕はスパイダーマンなんだ。だから君と付き合えないし、約束も守れない。
ピーターの苦悩は遂に体にも現れ、スパイダーマンの能力が使えなくなってしまう。
こんなにも辛い思いをするのなら。
ヒーローであることで自分を殺し続けるくらいなら。
ピーターは決断する。スパイダーマンをやめることを。
そこからなんて楽しそうなのだろう。
毎日が輝きまくるわけだ。ここが今回の唯一明るいシーン。
だが、視聴者含め、「これでいいの?」というモヤモヤがあるので、明確には明るいとは言えないかも。
それでも、彼は久々の自由を謳歌する。
だが、それをキッカケに関係の修復を望むも、MJには今更何?って感じで、寧ろ関係は悪化。
そして、遂にピーターはメイおばさんに、ベン伯父さんとの真実を伝える。
今まで誰にも言えず、ずっと罪悪感で苦しんでいただろう。
メイおばさんは最初に聞いた際には、酷くショックを受ける。当たり前だ。間接的に息子()が殺したと思っても差し支えない話だ。
それでも数日後には、いいの、気にしないで。寧ろ話してくれてありがとう。辛かったわね。と、女神のような言葉を涙ながらに掛ける。
なんて素晴らしい人なんだろう。息子()とはいえ自分の愛する人が殺される要因を作った人に対して、そんな言葉を掛けられる人がどれ程いるのだろうか。
私は心の底から、メイおばさんを尊敬する。
何なら、この映画のヒロインはMJではなく、メイおばさんだと本気で思う程である。
その大きな理由は3でもっとわかる。お楽しみに。
そしてメイおばさんに言われる。
ヒーローであること、ヒーローがいることは、それだけで皆の心を明るくし、希望を与える存在なのだと。
ピーターは葛藤する。
しかもピーターは優し過ぎて、自分がベストを尽くさない事で誰かが犠牲になる事が許せない。
火事現場からピーターパーカーとして子供を助けた時も、スパイダーマンなら助けられた命が他にあったということを知り、罪悪感に苛まれる。
また葛藤する。戻るべきなのか。
そんな中、MJはスパイダーマンに対する恋心や、ピーターに対しての未練を断ち切れずにいた。
それでもピーターは、ヒーローとして戻ろうと思い出してしまっているので、すれ違いでまたまた上手くいかない。
からの、突然ドクターオクトパス襲来。MJ誘拐。
というのも、ハリーからパラジウムを貰いたい→ハリー「スパイダーマンうざいからここに連れてこい」
→どこ?→多分ピーターが知ってる!(?)
てなわけである。理不尽。
ハリーはもう、復讐に取り憑かれてしまっているわけである。
MJを奪われてピーター激怒。スパイダーマンは完全復活を果たし、遂にドクターオクトパスと最終決戦。
この電車のシーンは、映画史に残る名シーンの一つだと、個人的に思う。
息つくまもないスピーディーなアクションに、電車のブレーキを壊され、体をボロボロにして電車を止めるシーン。そして乗客に助けられ、素顔を見ても皆カメラひとつ向けず、若きヒーローに敬意を表すシーン。
なんならこの映画はここがピークだ。
この市民が非力ながらもスパイダーマンを守り、助け合うのが熱すぎる。
そしてピーターはハリーの元へ連れて行かれ、正体がバレてしまう。
ハリーはめちゃくちゃショックを受ける。親友が父を殺したのか?と。
一旦そこは置いておき、ピーターはMJを助けに向かい、一応決戦。
ドクターオクトパスはやっと目を覚まし、機械から自我を奪い返し、核融合ごと、自らを川に沈め、幕を閉じる。
カッコイイなぁ。新作でどのような形で出演するのかわからないが、めちゃくちゃ楽しみだ。
そして、MJにも正体がバレ、やっと本当の自分の思いを伝える事が出来る。
やっと。
長く苦しい戦いだっただろう。
ようやく報われたような、そんなシーンだ。
ハリーは心の中のパパに触発され、ゴブリンへの道を開く。
ラストのMJの結婚式に、彼が緑の蝶ネクタイを付け、ニヤリと笑うシーンは、監督のセンスとしか言い様のない素晴らしいシーンだ。
そしてMJは式を飛び出し、ピーターと結ばれる覚悟をする訳だが、単純に宇宙飛行士が可哀想やな。ただMJに振り回されっぱなしなのが。
ピーターと結ばれ、ハッピーエンドを匂わせはしているが、このシリーズがそんな生易しいシーンを見せてくれる訳もなく、愛し合う時間を中断し、街を守りに行く彼の後ろ姿を悲しそうに見つめるMJを見ると、これがまた次の災難の序章にしか過ぎないのだなと、わかるわけである。
1も暗いが、2も暗い。
常に心臓をキュッとされているようなシーンの連続。
だが、これこそがリアル。
ヒーローなんてものは、そんなに甘くない。
現実も、全然甘くないし、何もかも上手くいかない。
そんな中、たまーーに上手くいくのが人生だったりするもので、それを正に表していて、本当に面白い映画だなぁと思う。
さて、ラストの3はもっと辛い。
でもいいシーンも盛り沢山なので、最後までピーターに感情移入して、一緒に苦しみましょう。