「ある一点を除けば、ヒーローのオリジン映画としては最高峰の出来でしょ!」スパイダーマン たなかなかなかさんの映画レビュー(感想・評価)
ある一点を除けば、ヒーローのオリジン映画としては最高峰の出来でしょ!
現在に至るまでのアメコミ映画人気を確固たるものにした、記念碑的な作品『スパイダーマン』シリーズの第1作。
特殊な蜘蛛に噛まれたことでスーパー・パワーを手に入れた青年、ピーター・パーカーが「スパイダーマン」として活躍する様子を描いたアメコミ・ヒーロー映画。
監督は『死霊のはらわた』シリーズや『ギフト』のサム・ライミ。
主人公ピーター・パーカー/スパイダーマンを演じたのは『エンパイア レコード』『サイダーハウス・ルール』のトビー・マグワイア。
本作のヴィランにして軍事企業「オズコープ」の社長、ノーマン・オズボーン/グリーン・ゴブリンを演じたのは『プラトーン』『アメリカン・サイコ』の、レジェンド俳優ウィレム・デフォー。
ピーターが想いを寄せる同級生メリー・ジェーン・ワトソンを演じたのは『インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア』『ジュマンジ』の、名優キルスティン・ダンスト。
ピーターの親友にしてノーマンの息子、ハリー・オズボーンを演じたのは『25年目のキス』のジェームズ・フランコ。
新聞社「デイリー・ビューグル」の社長、J・ジョナ・ジェイムソンを演じたのは『サイダーハウス・ルール』『ザ・メキシカン』の、後のオスカー俳優J・K・シモンズ。
製作総指揮/原作はマーベル・コミックの編集長として辣腕を振るった、伝説のアメコミ原作者スタン・リー。
マーベル映画には決まってカメオ出演することで知られているが、本作ではグリーン・ゴブリンから逃げ惑う群衆の一人として顔を覗かせている。
今や世界で最も人気のあるフランチャイズとなった「MCU」。しかし、このシリーズの成功の下地を築いたのは本作から始まった『スパイダーマン』シリーズと言えるでしょう。
これまでにもアメコミヒーロー映画の成功作品はあった。例えば1978年の『スーパーマン』や1989年の『バットマン』がそう。
とはいえ、やはりコミック原作もの=子供向けという図式は壊せなかった。両作品とも、金儲けを目的とした安易なシリーズ化の結果、尻窄み的な終末を迎えてしまった。
しかし、1998年の『ブレイド』の登場により潮目は変わる。
コミック原作でありながらPG12という規定で公開されたこの作品の成功により、アメコミ原作映画の間口がグッと広がった。
そして2000年の『X-メン』により、アメコミは世界的なムーヴメントとなり、2002年の『スパイダーマン』により決定的なものとなった。
子供の時に観て以来なので久しぶりの鑑賞となったが、今観ても映像的には全く古くなっていない。
CGの不自然さも感じないし、スーツに至ってはMCU版よりもカッコ良いとさえ思える。
この映像のリアリティにより、本来は荒唐無稽なヒーロー作品に説得力が生まれ、広い世代の観客に受け入れられることになったのだろう。
スーパーヒーロー作品にホラー映画の監督サム・ライミ!?と思った人も多かったんだろう。
子供の頃はそんなこと知らないから普通に観ていたけど、知識がついた今なら自分でもそう思う。
でも改めて鑑賞して、なるほど!と思った。
蜘蛛に噛まれて変身するのって、確かにホラー映画の系譜だ!
1920〜50年代的なユニバーサル・モンスターズの正当な後継者がアメコミ・ヒーローだったとは盲点だった。
自分の身体から糸が出てくるって、よくよく考えると凄いキモいし怖い…😖後々、オリジナルのスパイダーマンは機械で糸を出していると知って驚いた、というのは自分だけではないと思う。
ベンおじさんを殺した強盗を追い詰めるところとか、完全にホラー映画的な演出だったもんな〜。怖いっ!
本作の作風はダークでハード。これは『ブレイド』や『X-MEN』の流れを引きずっているからだろう。
スパイディ特有の軽口は本作では封印されている。本作でスパイダーマンを知った観客は「えっ!スパイダーマンって本当はこんなに明るいキャラクターなんだっ!」と後年になって知り驚いたことだろう。自分はそうでした。
シナリオはすごく良くできている!
『スパイダーマン』を全く知らない人への説明としては完璧に近いのでは。
スパイダーマンの能力について、科学者が学生に向けて蜘蛛の特性を説明するという描写によって明らかにするところなんか、スマートだし分かりやすい。
自分の力に溺れるピーターを描写する為に、家族3人が写った写真を蜘蛛の糸でピキッと割るところとか、ベタだけどわかりやすいし上手い。
ヒーローとしての自覚を持ったピーターが、倒れたメイおばさんの枕元に置いてある同じ写真をしげしげと眺める描写を入れるとか、監督分かってるぅ〜!と言わざるを得ない。
「親愛なる隣人」としての活躍、つまりNY市民のピンチを助けるという描写をたっぷり描いているところも良い!
ヴィランと戦うことがスーパーヒーローの使命ではない、ということを作り手が理解している点が素晴らしい!
市民の救助活動をしっかりと描写したおかげで、クライマックスでスパイダーマンのピンチを市民が助けるというシーンが効いてくるわけです👍
「大いなる力には、大いなる責任が伴う」というスパイダーマンのテーマを、作品全体の展開を通して描き切り、さらには続編の布石も置いておくという抜かりのない作品。
それだけに、とある一点が非常に気になってしまう。
そう、それはMJの描き方!
多分同じことを思っている人も多いと思うが、本作のMJはとにかくあっちへウロチョロ、こっちへウロチョロと男の間を動き回る。
まぁ、正直ビッチと言われても仕方がない描かれ方をしている。
彼女は荒んだ家庭環境で育っており、そのことが過剰に異性との繋がりを求める彼女のアイデンティティを形成した、というのはわかる。
家族で激しく言い合いをした後、ピーターと言葉を交わしている最中に恋人のフラッシュが車に乗ってやってくる。
あれだけ落ち込んでいたのに、フラッシュの前では何事も無かったかの様に振る舞うMJの姿は観客の心を打つ。
とはいえ、そういうキャラクター像がヒロインとしての魅力に繋がるか、といえばそうでは無いわけで…。
複雑な恋模様が描きたかったのはわかるけど、一作の中でフラッシュ→ハリー→スパイディ→ピーターと、3回も心変わりするというのは、やっぱりちょっと受け入れ難い。
ある意味リアリティがあるとも言えるけど…😅
MJのキャラクター像には不満が残るが、それを除けばヒーローのオリジンストーリーとしては満点💯
ダークな作風だが笑えるところもちゃんとあるし、アクションはめっちゃカッコ良い✨
エンドロールで「スパイダーマンのテーマ」が流れるところなんか、本当によく分かってる!
アメコミ映画初心者に一本オススメするならば、間違いなくこれ!
MCUファンにも観てもらいたい一作!
かせさんさん、コメントありがとうございます♪今年も宜しくお願い申し上げます🙇
アメコミのヒロインおざなりになりがち問題はなかなか根深いですよね💦最近はマシになってきたとは思いますが…。
初見時に「すごいの出てきたなあ大人でも楽しめるスパイダーマンだ!ヒロインは色々残念だけど、サム・ライミだし」と思った自分。
恐ろしいほどの全文同意で、もうレビュー書かなくていいやと思いました。
ヒーロー映画ってヒロインは大体文鎮扱いで、個性なんかいらないと思われてるんだなというのがよく分かるシリーズでもありますね。