好男好女のレビュー・感想・評価
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歴史から現在へ
この作品からホウ・シャオシェンの映画は地元の映画館に来なくなり、レンタルビデオなどで観ることになった。
ホウ・シャオシェンの台湾現代史三部作の最終作で、1940~50年代の抗日戦争から戦後の二・二八事件、そしてその後の白色テロの時代が取り上げられている。といっても主人公は現代の女優で、彼女が演じるフィクションの映画という劇中劇の形で描かれるという物語構造になっており、しかもウェイトが現代の女優の物語のほうに置かれていて劇中劇は断片的にしか出てこないため、歴史部分については非常にわかりにくい。
製作までに企画が紆余曲折したようで、当初は釈放された老政治犯を描く朱天心(チュー・ティエンシン)の『台湾從前有個浦島太郎』を原作とする予定だったそうだが、アイドル歌手出身の伊能静を主演にキャスティングした後に、鍾浩東・蒋碧玉ら政治的迫害を受けた人々のドキュメントである藍博洲(ラン・ボーチョウ)の『幌馬車の歌』(映画公開から10年後に邦訳が出版)を原作に採用したとのこと。その『幌馬車の歌』が劇中劇となった部分なんだが、そうこうしてるうちにホウ・シャオシェンの意識や関心・興味が過去から現在に移ってきちゃったんだろう。むしろ、それ以前の現代劇『ナイルの娘』や、その後の『憂鬱な楽園』『ミレニアム・マンボ』などにつながる要素の多い映画となっている。
伊能静は公開当時、同じ台湾の金城武みたいに日本人の血をひいているような紹介があったように記憶しているが、実際には伊能静というのは芸名で本名は呉静怡。母親が再婚した日本人継父の姓が芸名の由来だそうで、中国語発音では「イーナン・チン(またはイー・ナンチン)」、英語名は「アニー・イー」だそうだが、日本では最初の紹介以来「いのう しずか」で通っている。
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