シン・シティ : 映画評論・批評
2005年10月4日更新
2005年10月1日より丸の内ルーブルほか全国松竹・東急系にてロードショー
クールな映画を作るヤツは、やることもやっぱりクール
またアメコミものの映画……と思っていると驚かされることになる。「シン・シティ」の原作が数多のコミックとまったく異なるように、それをまんまスクリーンに移し替えたこの映画版も、アメコミものの映画化どころか、その辺の映画とさえまったく異なる作品になっている。
その映像は原作同様モノクロ/パートカラー。役者たちは原作通りのルックスで現れ、原作と同じハードボイルドなキャラクターを演じ、同じセリフを口にする。カット割もアングルもほぼ原作と同じ。そこまで徹底的に原作を模倣して生まれたのは、まさに動くアメコミ。監督ロバート・ロドリゲスの言葉を借りるなら「ムービング・グラフィック・ノベル」。いまだかつて見たことのないクールでスタイリッシュなビジュアルだ。
そのかっこよさを支えたのは、ほかでもないロドリゲスの男気である。彼はDGA(全米監督協会)を脱退してまで原作者フランク・ミラーに共同監督のクレジット(同協会は監督に複数の名前があがるのを禁じている)を取らせたのだ。クールな映画を作るヤツは、やることもやっぱりクール。この映画を見る上で、ぜひとも憶えておいて欲しいクールなエピソードである。
(渡辺麻紀)