ポセイドン : 映画評論・批評
2006年5月30日更新
2006年6月3日より丸の内ピカデリー1ほか全国松竹・東急系にてロードショー
リアルタイムでパニック状態を描く
出世作「U・ボート」で潜水艦、「パーフェクト・ストーム」で漁船と、壮絶な海難スペクタクルを描いてきた監督が、パニック映画の古典「ポセイドン・アドベンチャー」(72)のリメイクに起用されたのは納得の人選。
オリジナル作品は、アカデミー賞特殊効果賞受賞の迫力映像に加え、オールスター・キャストによる人間ドラマが、感動を盛り上げ、一夜明けたラストシーンは、ほっとするカタルシスを与えてくれたものだった。
今回のリメイク版の上映時間は正味90分ほどで、ニュー・イヤーズ・イブのカウントダウンで賑わう豪華客船ポセイドン号は、最新鋭にもかかわらず、高波の不意打ちをくらってすぐに転覆、火災や浸水が重なり、船内は阿鼻叫喚の地獄絵図へと一転する。それから、わずかな人々による脱出サバイバルが始まる。
ともかく、R指定でもおかしくない惨劇のスペクタクルに圧倒されっぱなしだが、なぜかエモーションがついていけない。その理由は、来日した監督の記者会見で氷解。この映画は、監督いうところのスーパー・リアリズム。TVの「24」と同じく、リアルタイムでパニック状態を描くのに主眼があり、9・11以降を反映させたパニック映画だったのだ。
(高橋良平)