ロード・トゥ・パーディション : 特集
撮影監督がオモシロイ!
パート2:当代の名撮影監督をチェック!
【ばりばり系】
■ロジャー・ディーキンス
Rodger Deakins
「バートン・フィンク」(91)以降のコーエン兄弟監督作すべてを撮影するディーキンスは、すでにアカデミー賞ノミネート歴は4回。フランク・ダラボン監督の「ショーシャンクの空に」(94)、マーティン・スコセッシ監督の「クンドゥン」(97)、そしてコーエン兄弟の「オー・ブラザー!」(00)と「バーバー」(01)がその作品。みな映像のタイプは違うがそれもそのはず、彼曰く「すべての映画には独自のルックがある、というのが僕の信念だ」。コーエン兄弟の新作「Intolerable」ももちろん撮影。
49年、英デボン州生まれ。海沿いの観光地で育ち、10代で映画マニアになるが、最初は画家、次に写真家を目指し、ドキュメンタリー映画監督を経て、撮影監督に。「この頃の映画撮影で嫌悪するのは、単純過ぎることだ。きれいかセンセーショナルか、どっちかしかない」という彼の喜びは、映像とドラマが共振する瞬間を発見すること。「バーバー」ではこんな瞬間があった。
「フランシスが浴槽に入っているとき、ドアにビリー・ボブの影が映る。彼扮する主人公の孤独が映るんだ」
<代表作>
「バートン・フィンク」(91)
「クンドゥン」(97)
「バーバー」(01)
■ダリウス・コンジ
Darius Khondji
55年、イランのテヘラン生まれ、パリ育ち。父はイラン人、母はフランス人。12歳の頃から映画好きで、ニューヨーク大学で映画を学び、87年から撮影監督に。注目を集めたのは、ジュネ&キャロ監督の「デリカテッセン」(91)。彼らの「ロスト・チルドレン」(95)、「エイリアン4」(97)も撮影。デビッド・フィンチャー監督の「セブン」(95)でハリウッドの人気カメラマンに。その後、ベルナルド・ベルトルッチ監督の「魅せられて」(96)、ニール・ジョーダン監督の「IN DREAMS/殺意の森」(98)、ロマン・ポランスキー監督の「ナインスゲート」(99)、ダニー・ボイル監督の「ザ・ビーチ」(00)と、大物監督、注目監督との仕事が続く。これまでの作品では、外光より室内の陰影を映し出す映像で魅力を発揮する傾向があったが、デビッド・フィンチャーの新作「パニック・ルーム」(02)は途中降板、ウディ・アレンの新作「Anything Else」に起用され、これまでとはまた別の映像を見せてくれるようになるのかもしれない。
<代表作>
「デリカテッセン」(91)
「セブン」(95)
「ナインスゲート」(99)
■エマニュエル・ルベッキ
Emmanuel Lubezki
メキシコ大学の映像学科出身、同国出身の監督たちの作品、アルフォンソ・アラウの「赤い薔薇ソースの伝説」(92)や「雲の中で散歩」(95)、アルフォンソ・キュアロンの「リトル・プリンセス」(95)、「大いなる遺産」(97)などで撮影を担当、その光に満ちた映像とあざやかな色彩が印象的なルベッキだが、実は他の一面も。ベン・スティーラーの「リアリティ・バイツ」(94)や、ティム・バートンの「スリーピー・ホロウ」(99)、マイケル・マン監督の「アリ」(01)の撮影も彼。いろんな引き出しを持っていそうなカメラマンなのだ。「リトル・プリンセス」と「スリーピー・ホロウ」でオスカーにもノミネート。
「クローズアップは基本的に、ライトひとつを自分がベストだと思う位置に置いて撮るのが好みだ。ワイドレンズも間違いなく好きだね。登場人物は状況を含めて見せたほうが、物語が膨らむと思うんだ」
新作は「バットマン・リターンズ」や「メン・イン・ブラック」のプロダクション・デザイナーとして有名なボー・ウェルチが監督業に初挑戦する「Cat in the Hat」(03)。子供向け人気キャラをマイク・マイヤーズ主演で描く作品だ。アルフォンソ・キュアロン監督の「ハリー・ポッター3」は撮るんだろうか、ちょっと気になる。
<代表作>
「リトル・プリンセス」(95)
「スリーピー・ホロウ」(99)
「天国の口、終りの楽園。」(01)
【番外編】
こうした監督に近い職務のせいか、撮影監督から監督に進出するケースも少なくない。比較的近年の例では「スピード」のヤン・デ・ボンや、「ロスト・ソウルズ」で監督業に挑戦したスピルバーグ監督作の定番カメラマン、ヤヌス・カミンスキー。もっともカミンスキーは「A.I.」「マイノリティ・リポート」では、またスピルバーグの撮影監督を務めている。「メン・イン・ブラック」シリーズをヒットさせてるバリー・ソネンフェルドは近年の出世頭か? ちなみに、コーエン組のロジャー・ディーキンスはかつては監督志望で脚本まで書いたが、コーエン兄弟と仕事して彼らの才能に敬服し、監督業を断念したそうだ。そりゃ、比較する相手が悪かったような気もするが。