「美しいがこんな紳士的なギャングいないだろう」ロード・トゥ・パーディション Cape Godさんの映画レビュー(感想・評価)
美しいがこんな紳士的なギャングいないだろう
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総合:75点
ストーリー: 70
キャスト: 70
演出: 80
ビジュアル: 75
音楽: 75
映像も物語も美しく描かれている父子の逃避行。追跡してくる暗殺者に警戒を怠ることなく命懸けの反撃を試みるのは、全て子供への愛情ゆえ。普通の場面だけでなく殺しの場面ですら美しいし、それを実現した撮影も見事。全体的に刹那的な物悲しい雰囲気に満ちている。
だがトム・ハンクスは凄腕のギャングには見えない。それどころかこんな紳士的な人はなかなかいないだろうと思う。荒くれ者たちを相手にするためには、例え演技でも自分も荒くれ者を演じなければ相手に舐められてしまって仕事にならない。たとえ本来の性格は家族思いの紳士的な人であって自ら進んでギャングになったのでなくても、その世界に長い間どっぷりと浸かれば通常は環境が人を変えてしまうもの。恐らく脅迫・金の回収・殺しなどたくさんの荒っぽいことをしてきたはずのトム・ハンクスであるだろうに、何か綺麗に描きすぎていて違和感がある。もしこんな紳士的で家庭的な人物が、いったん家庭を離れると平気で脅迫や金の回収や殺しをやっているのなら、むしろ相当な異常者だろう。その設定が駄目。
彼は家族を殺された被害者でもあるが、その前までは加害者でもあった。だから最後は当然ああなるべきかと思う。映画では被害者ふうに描かれているけれど、彼もギャングの世界に生きて恐らく過去にもたくさんの人を殺しているのだから、自分だけ生き延びられないでしょう。それに子供を守ろうとする父親という意味で、この世界から息子との関係を完全に断ち切る意味でも重要なのだと思います。だから納得の結末でした。
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