アザーズ : 映画評論・批評
2002年4月2日更新
2002年4月27日より丸の内プラゼールほか全国松竹系にてロードショー
時空がぐにゃりとよじれ「他者」が思いがけない正体を現す
“ヒッチコックの再来”とうたわれるスペインの新鋭、アメナバールのハリウッド進出第1弾。製作を買って出たトム・クルーズは、前作「オープン・ユア・アイズ」を見たとき「体中にアドレナリンが駆けめぐった」そうだが、この「アザーズ」は古い屋敷に舞台を限定、バイオレンスも血のりもなく、ひたひたと心理的恐怖をつのらせる。
1945年、霧深い英国ジャージー島の屋敷。夫は戦線から戻らず、2人の子供は日光アレルギー。美しい女主人は邸内に光を入れないよう神経を尖らせている。やがて屋敷にいるはずのない「アザーズ(他者)」の物音が響き出す。いったい誰が……。
ニコール・キッドマン扮する女主人は、髪型や服装や名前(グレース)までヒッチコック・ヒロインを思わせる。だが、徹底したリアリストだったヒッチコックに対して、アメナバールが見つめるのは常に、科学や論理では割り切れない世界だ。タイトルも暗示性を含んでいる。時空がぐにゃりとよじれて思いがけない正体を現す「他者」。衝撃のラストは「シックス・センス」ばりに絶対秘密だが、たとえ結末を知っても、このヒロインの「孤立無援」の闘いはきっと心に焼きつくだろう。
(田畑裕美)