「名作を観たという満足感は得られる」オペラ座の怪人 おじゃるさんの映画レビュー(感想・評価)
名作を観たという満足感は得られる
そのタイトルだけは知っていたものの、一度も観たことがなかった「オペラ座の怪人」。公開20周年を記念して4Kデジタルリマスター版でリバイバル上映されるということで、この機会に鑑賞してきました。
ストーリーは、19世紀パリのオペラ座の地下に隠れ住み、醜い素顔を仮面で隠し「オペラ座の怪人」と噂されていた男が、才能がありながら役に恵まれない歌手クリスティーヌに好意を抱くものの、彼女の心は幼なじみのラウルに向けられており、自身の一途な思いを伝え、彼女の心を手に入れようと、手段を選ばずにもがく悲しき姿を描くというもの。
かなり期待を高めて臨んだ本作ですが、それにしっかりと応える見事な開幕です。廃墟のような場所で開かれる寂しげなオークションがモノクロで描かれるのですが、それが次々と鮮やかな色に染まり、朽ち果てた劇場がかつての輝きを取り戻しながら過去のシーンへと移っていきます。オシャレな演出と映像表現に魅了され、開幕と同時に引き込まれます。
そして、要所要所で鳴り響く壮大なテーマ曲が、観る者の心を強く惹きつけます。普段は音楽に関心が向かないことが多いのですが、本作のテーマ曲は別格です。これだけは何回聴いても気持ちが高ぶるのを感じます。名曲が演出する名シーンが、名作たらしめているのかもしれません。20年前の作品でありながら、4Kデジタルリマスターのおかげか、映像も音楽もさほど古さを感じません。
ただ、予想を遥かに超えるミュージカルムービーなのには参りました。ミュージカルは苦手でどうにも眠くなってしまいます。歌の良し悪しもわからないので、同じようなことを言葉を変えて何度も声高らかに歌われても、くどいだけでなかなか感動には至りません。ファントムとクリスティーヌとラウルの心情はわかるのですが、歌われることでかえって客観的に見てしまっているように感じます。もうこれは観る側の感性の問題なので、作品の出来栄えとは関係のない話です。
というわけで、大きな感動が得られたわけではないですが、名作と言われる作品を観たという満足度は確かに得られました。機会あって劇場で鑑賞できてよかったです。
主演はジェラルド・バトラーで、怪しくも色気漂うファトムを好演しています。共演はをエミー・ロッサムで、圧巻の歌声を披露しています。脇を固めるのは、パトリック・ウィルソン、ミランダ・リチャードソンら。