ナイト ミュージアム : 特集
恐竜の骨格標本も、モアイ像も、ルーズベルト像も、展示物がぜ~んぶ生き返る!? アメリカ自然史博物館の夜間警備員になったラリーと息子ニックが体験する奇跡と勇気を描くファンタジー・アドベンチャー「ナイトミュージアム」が、いよいよ3月17日に公開される。ベン・スティラー、ロビン・ウィリアムズら、芸達者なコメディアンを揃えたこの映画の笑いと感動のツボを解説しよう。(文:佐藤睦雄)
博物館のアノ展示物が生き返る!?時空を超えたファンタジー
■米自然史博物館の展示物が動く楽しさは、「トイ・ストーリー」感覚!
物語の舞台となったアメリカ自然史博物館(American Museum of Natural History)は、ニューヨーク市マンハッタンのセントラルパークの西端に位置する、1869年設立の自然科学・博物学に関する世界最大の博物館。ここは、ノア・ボーンバッハ監督の「イカとクジラ」で海洋ホールにあるダイオウイカとマッコウクジラの実物大模型が使われているように、「マンハッタン」「素晴らしき日」「小説家を見つけたら」といったニューヨークが舞台の映画にちょくちょく登場する。子供連れの見学に、恋人同士のデートに、ニューヨーク市民になくてはならない大人気スポットなのだ。ナショナル・ジオグラフィック誌が世界のあちこちで取材している自然科学・博物学に関することすべてがジオラマ・実物大模型・標本などで展示されている。
この映画のおもしろさは、アメリカ人の老若男女すべてが知っている(あるいは見てみたい)アメリカ自然史博物館の展示物たちが夜な夜な動き出すさまを目の当たりにできることである。誰もが知っているおもちゃたちが動き出す「トイ・ストーリー」はアニメーションだったが、こちらはフルCGの実写版だ。しかも博物館であるから、タイムマシンにお願いして時代ごとに旅するのではない。地球の歴史すべてから、モノ・モノ・モノが“一堂に会して”いる。彼らがクリーチャーと化している様は、想像を絶して楽しい。同じCGものの「ジュマンジ」よりも、感覚的に実際ありそうで、リアルに感じられる。
ティラノサウルスが犬みたいに骨を求めて走り回り、古代エジプトのファラオがミイラから復活する。アメリカ史に歴史を刻むルーズベルト大統領(テディベアの語源だね)が建国前の美しいインディアン娘に世紀の恋をすれば、ローマ皇帝オクタビアヌスがグラディエーターを引き連れて、西部開拓時代のカウボーイと大乱闘を繰り広げる(ジオラマで隣同士に展示されている2つの世界のミニチュアフィギュアが大喧嘩するわけだ)。モアイ像がガムを噛み、ネアンデルタール人がオイルライターで火を点ける。そんな見たこともない光景が次々と展開されるのである。
■ベタなギャグや定番の話術を使って、笑わせ泣かせる徹底した娯楽精神!
どんな仕事をしてもうまくいかなかったベン・スティラー演じる主人公ラリーは、夜間警備員となって、彼らを徐々に手なずけて、信頼を勝ち取っていくくだりは感動的だ。ひょんなことから彼らの一部が博物館の外に飛び出してしまう。明け方になると魔法が解け、彼らは消え去らなければならない。そんなとき、ラリーは“仲間”の力を借りて、次から次へと博物館へ誘導する。D・W・グリフィスの時代から使われている“ギリギリの救出劇”(ノンクレジットのスティラーの親友が大活躍!)まである。ラリーが彼らのリストを1つ1つチェックするなか、つがいの哺乳動物が博物館へ入っていくさまは、まるで「ノアの箱船」だ。ドタバタコメディのように見えながら、こうした主題を偲ばせる手口はピクサーみたいだ。しかも、彼らの尊敬を一身に集めた父を見た息子(ジェイク・チェリー)は、ギクシャクしていた父との関係を……。「サンキュー・スモーキング」などでも使われた使い古された教条的な主題だけど、泣けるのだヨ!
コメディアンであるベン・スティラーらしいギャグが連発される。特に、小猿にユダヤっぽい大きな鼻をかじられるシーンは爆笑だ。ルーズベルト大統領役のロビン・ウィリアムズは、例のハイテンションパワーで一気に映画を盛り上げる。また、「チキ・チキ・バン・バン」のディック・バン・ダイクや「ティファニーで朝食を」のミッキー・ルーニーといった大ベテランのコメディアンが秘密を隠した老警備員を演じていて、芸達者ぶりを披露しているのもうれしい。