モンスターズ・インク : 映画評論・批評
2002年3月5日更新
2002年3月2日より丸の内ピカデリー2ほか全国松竹・東急系にてロードショー
“ストーリー構築に3年間”の成果を見るべし
別にフル3DCGアニメーションに限った話ではないのだが、長編映画を製作するならば、十分に練り込まれた脚本が必要だ。そうでなければ、どれほど優れたCG技術を持ってしても、観客に感動を与える映画は生まれない。
このことを最も重視しているのが、ピクサー・アニメーション・スタジオである。同社のフル3DCG長編第4弾「モンスターズ・インク」には、5年もの歳月が費やされており、その内の3年間がストーリー構築のために使われている。
その物語には、まったく穴が無く、非常に新しいパターンのストーリーに出会ったという感想を持った。あえて分類するなら、バディムービーとサラリーマンものコメディの組み合わせと考えられるし、往年のカートゥーンの要素も感じられる。
とは言うものの、子供の悲鳴をエネルギー源にしている発電会社とか、人間の子供は非常に有毒だと信じているモンスターの社会という発想はすこぶるユニークで、実際のアメリカ社会に起こった“あの事件”と重なる現代性も感じられる。こういったストーリーの面白さで、観客はぐいぐい引き込まれていき、エンディングには思わず涙が浮かんでしまうという、娯楽作品としては理想的な仕上がりになっている。
(大口孝之)