「計算詰めの男が計算しきれなかったこと」マッチポイント Cape Godさんの映画レビュー(感想・評価)
計算詰めの男が計算しきれなかったこと
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総合75点 ( ストーリー:75点|キャスト:80点|演出:75点|ビジュアル:70点|音楽:60点 )
野心溢れる若者が目的のために準備と努力で上流社会に取り入る。爽やかな良い人を演じていくし、ドストエフスキーをはじめとしてそのための細かな描写が計算されて映像に取り込まれている。こういう人はあくどいかもしれないが、手綱を緩めず全力を尽くせるという意味で興味をそそる。果たして彼の行き着く先はどこであろうか。
だが魅力的な女1人の登場により、彼はあっさりと自制心を失ってしまう。あれだけ計算尽くしで動ける若者が、あっさりと理性を失くして感情のままに衝動的な動きをする姿にがっかりとした。元有名選手なんだから女に不自由などしなかったであろうに、女でこんなに簡単に崩れるとは思わなかった。中盤はその意味でやや面白みを失くした。
後半に入って盛り返す。事態は彼が誤魔化せる範囲を超えてきているので、もしかすると危険を犯してまで非合法的解決法に頼るのかもと思ったらやはりそうだった。それで彼は上手く問題に対処出来て逃げ切れるのか、それとも素人の計画などあっという間に破綻してしまうのか。内容は『太陽がいっぱい』を思い出させる。
指輪が欄干を越えられない場面には騙された。細かな伏線をしっかりと描いて回収していく脚本の仕掛けは良く出来ていた。いい人かもしれないが地味で退屈な妻と、危険さと美しさで惹きつけられる浮気相手をいちいち対照的に描くのも上手かった。勝手に職業・家・子供のことを計画し進める妻にはうんざりするのもわかる。それを演じた女優2人は主人公同様に良い演技だった。
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