ロード・オブ・ウォー : 映画評論・批評
2005年12月13日更新
2005年12月17日より有楽座ほか全国東宝洋画系にてロードショー
評価してなかった監督だが今回は別
20世紀世界を支配した「資本主義vs共産主義」という、今やまぼろしの二項対立。これにほころびが見えはじめた80年代初頭から“善悪の彼岸”を往く無責任男の疾風怒涛冒険物語。
二律背反的なキャラクターを演じれば良くも悪くも他を圧するニコラス・ケイジだけど、やはり想像以上のハマリ役。大物武器商数人の実話を混ぜ合わせた(地名・国名も含め、あからさまにリアル)という倫理的・政治的なチャランポランさには爽快感すら感じる。エピソードのひとつひとつにアメリカへの黒い皮肉がこめられているものの、すべては裏読みするまでもないほど明快で、100%乱世のピカレスク・ロマンとして楽しめるのだ。ま、メッセージ映画としては非力かもしれないが、プロパガンダを目論んでるわけじゃなかろうし、硬派なエンタテインメントとしちゃあ最高であろう。ジャレッド・レトやイーサン・ホークが映画の免罪符的意味でしかないのは残念だが。
ちなみに筆者はアンドリュー・ニコルを今までまったく評価してこなかったが今回は別。50年代的発想から逃れられないSF作品より、充分にリサーチした現実的題材のほうが向いてるのではないか?
(ミルクマン斉藤)