カンフーハッスル : 映画評論・批評
2005年1月5日更新
2005年1月1日より丸の内ルーブルほか全国松竹・東急系にてロードショー
チャウ・シンチーのカンフー映画への愛が炸裂!
ド直球な原題「功夫」が示すとおり、これはチャウ・シンチーのカンフー/武侠映画への愛の結晶である。かつての功夫スターを配したキャスティング、「燃えよドラゴン」の胴着で臨むクライマックス等、あちこちでその証明を確認できるが、何より病膏肓なのはストーリー展開そのものなのではないか?
当然シンチーが主役であるはずなのに、そろそろ終盤かなぁという頃になっても彼はショボいチンピラのまま。壮絶な闘いを繰り広げるのは豚小屋砦の麺職人に仕立屋に荷担ぎ人足、そして大家のオッサンオバハンばかりなのだ。で、その明らかにネジの外れたオッサンオバハンが名乗ったとき……中国系人民が一斉にぶっ倒れるのがまざまざと見える。なんと武侠小説の巨匠・金庸作品に登場する美男美女(かつてレスリー・チャンやアンディ・ラウも演じた)と同じ名前なんだから!
そういや脇役が突然主人公になったりするのは金庸作品の常。そんな愛すべき構成力のユルさをもわざと取り入れているのに違いない。しかも舞台は30年代の上海。彼自身の出世作にしてSFX路線第一作「ゴッド・ギャンブラーIII」(91)ふたたび、ではないか!……思えばアレはブルース・リーと並ぶシンチーのアイドル、チョウ・ユンファ主演ドラマの真摯なパロディであった。そう、彼の映画は昔も今も、まず「愛」ありきなのだ。変わってね~。
(ミルクマン斉藤)