キル・ビル Vol.2 : インタビュー
マイケル・マドセン インタビュー
「俺は生まれる時代を間違えたのかもしれないな」 若林ゆり
「レザボア・ドッグス」の“耳切り男”ことMr.ブロンドの演技で、強烈な印象を残したマイケル・マドセン。久しぶりとなるタランティーノ作品「キル・ビル」でのバド役は、またしても彼にとってのエピックとなった。
「バドってやつは、興味深い男だよ。Mr.ブロンドも面白かったが、彼は完全にイカレてたからな。でもバドは、良心の呵責ってもんに駆られたわけなんだ。詳しい事情はわからないが、彼はひとりになりたかった。それで砂漠に移り住んでるのに、やっかいなことが降りかかる。飛行機に乗ってて、隣の乗客がずっと話しかけるのをやめないのと同じだよ。『なんてこった、ほっといてくれよ。俺は窓の外を眺めてるんだから。いいかい、俺は話したくないんだ』って感じさ。クエンティンは、バドの過去についてアニメーションを作る気があったみたいだな」
バドはカミソリのネックレスを付け、カウボーイ・ハットを被っているが、これはマドセンのアイディアだとか(タトゥーは自前)。
「ただ何か首に付けたくてね。最初は父親からもらった古いタイプのカミソリを付けようと思ったんだけど、クエンティンには大不評でさ。『それを付けてたら、バドはコカインをやってるって言ってるようなもんだぜ。それで粉にしてるって思われる』って。そしたら小道具係が、ステアリング・シルバー製のカミソリをくれて、これならよくネックレスに使われるって教えてくれてね。やっとOKが出たんだ。帽子はメキシコでウェスタンをやったとき買ったもので、俺の芝居の半分は、あの帽子のおかげだよ。これも最初はクエンティンに反対されたんだが、俺はしつこく被り続けてた。そしたらある日突然、『わかったよ。もうその帽子なしじゃ君のことを考えられなくなっちゃったよ』って言い出してね。その代わり、彼はバドに『帽子を脱げ』っていうキャラクターを書き足した。それで俺に、あの帽子を脱がせることに成功したんだよ。彼らしいよな」
バドはエル・ドライバー(ダリル・ハンナ)によって、かなり情けない状況に陥ることになる。この場面、マドセンとしては「最悪」な経験だったとか。
「まったく、ダリルはインチキ女だぜ。セリフを覚えないで、紙に書いたのを読んでやがるんだからな(笑)。あのシーンはタフだった。クエンティンはカメラのすぐ横にいて、このシーンをこういうふうにやれってワーワー言ってるんだ。彼が『汗が十分じゃない。カット、カット!』っていうと、俺は『オー・マイ・ゴッド』さ。水をスプレーしやがるんだ。しかも俺はエルを『このメスブタ!』ってののしりたいのに、それができない。信じられないほどストレスだらけで、ノイローゼみたいになったよ。でも、やっぱりクエンティンの書くキャラクターは面白いね。いまではこういう役はめったにないし、それを演じることが出来る役者もいない。スティーブ・マックイーンやバート・ランカスターの時代はとっくに終わったんだ。いまは、軽いやつらしかいなくなっちまったからな。クッキーの型みたいにみんな同じでさ。俺は生まれる時代を間違えたのかもしれないな」