ハルク : 映画評論・批評
2003年8月1日更新
2003年8月2日より日劇3ほか全国東宝洋画系にてロードショー
ハルクはフランケンシュタインの怪物でハイド氏なのだ
アメリカン・コミックスのスーパーヒーローたちには常に「正義の味方」と「異形の怪物」という二面性がつきまとう。もっとも、たいていの場合怪物性は目立たぬように後方に押しやられており、映画でそれをはっきりと指摘したのはティム・バートン監督の「バットマン」が最初だろう。
今回映画化された「ハルク」は、主人公の怪物性が完全に前面に押し出された、アメコミでも珍しい部類のキャラクターだ。実験中の事故で大量のガンマ線を浴びた天才科学者バナー博士が、怒りの感情を抱くたび、知能の低い怪力の巨人ハルクと化して破壊の限りを尽くすという基本設定は、明らかに「フランケンシュタイン」と「ジキル博士とハイド氏」を下敷きにしている。ハルクこそ原子力が生み出した現代のフランケンシュタインの怪物でありハイド氏なのだ。
「グリーン・デスティニー」や「楽園をください」といった、正邪の判然としないアクション映画を撮ったアン・リー監督は、本作でも、善悪の判定をしがたいハルクのキャラクターを悲劇として描きつつ、最新のSFXを駆使して原作コミックのダイナミックなアクションシーンを再現、ハルクのヒーロー性をも充分に描いた痛快な作品に仕立てている。
(堺三保)