「シリーズ始まった頃の夢見心地は、もう無い」ハリー・ポッターと炎のゴブレット 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
シリーズ始まった頃の夢見心地は、もう無い
シリーズ4作目。
原作では本作から上下巻に。
その分カットされたエピソードも多くなり、冒頭の恒例“愉快なダーズリー一家”がカットされたのは致し方ない…いや、残念!
確か、クィディッチのワールドカップに行く為ウィーズリー一家がダーズリー家にハリーを迎えに行き、別れ際ダーズリー一家のハリーへの愛情の無さにショックを受ける…ってエピソードだったような。
クィディッチのワールドカップや屋敷しもべ妖精の件もカット。
まあ、しょうがない。
だって、本作はエピソードてんこ盛り。
全部やってたら、とてもとても2時間半に収まらない。
何処から語っていいか迷うくらいなので、順を追って。
冒頭、ハリーが見た夢か現実か、ある屋敷での恐ろしい出来事。
クィディッチのワールドカップ中現れた“死喰い人”、夜空に打ち上がった“闇の印”。
本作は最初から“例のあの人”の存在を印象付ける。
新教授に、マッドーアイ・ムーディ。
見た目や過激な言動も勿論、かつて闇の勢力と戦った“闇祓い”であるという強烈インパクト。
(原作を読んでた時、ゲーリー・オールドマンがイメージに合うと思ってたんだけど…)
本作の見所の一つ、ホグワーツ、ダームストラング、ボーバトンの三大魔法学校による100年振りの対抗試合。
新しい学校、新しい生徒、ああそうか、魔法学校ってホグワーツだけじゃないんだ、と。
各校一人ずつ“炎のゴブレット”によって代表が選ばれ、その一人に後のイケメンヴァンパイア。
異例の事態発生!規定に満たしてないのに、何故かハリーも選ばれ…!
主人公だから特別に…じゃなく、これにはある陰謀が関わっている事が後々に…。
またもや肩身が狭くなるハリー。
そんなハリーに嫉妬剥き出しするのが、ロン。
いつも目立つハリーと、日陰の存在のロン。
親友だからと言って、いつもいつも好きでその場に甘んじている訳じゃない。
自分だってたまには注目を浴びたい。なのに、またハリー…。
初めて描かれるハリーとロンの確執。
が、ハリーが対抗試合の危険な課題に挑戦する様を見て、愚かだったと気付くロン。
青春だね。
本作は、青春ドラマの要素も強い。
対抗試合の催し物として開かれるダンス・パーティー。
女の子を誘わなくていけない。
恥ずかしくて照れ臭い。
ハリーは密かに想いを寄せる娘に申し込むが、撃沈。奇しくもその娘の相手は、同じホグワーツ代表のイケメンヴァンパイア。
ロンは“しょうがなく”ハーマイオニーを誘うが、既にハーマイオニーには相手が要る所かロンの無神経さにお怒り。(ほんのり色気あるドレス姿のエマは堪らん)
モテないハリーとロンは校内ヒエラルキーの下の方。
これら青春ドラマの要素は、ヒューマンドラマに手腕を奮うマイク・ニューウェルならでは。
対抗試合の課題は映像化にはもってこい。
特に、凶暴なドラゴンから卵を奪う課題はその賜物。
最後の課題で優勝杯を手にした時!
突然、別の場に転送。そこは、不気味な墓地。
そこで、最悪の事態を目にする。
ヴォルデモート、復活。
原作でもそう記されていたにせよ、邪蛇のような顔、青白い体、遂に目の当たりにしたそのおぞましいビジュアルは強烈。(演じるはレイフ・ファインズなのもある意味衝撃)
一戦交え、命からがら逃げるも、歓喜に湧く対抗試合の中でハリーは…。
対抗試合の陰でハリーをおびき寄せる為に仕組まれた罠、そしてある人物の正体…!
一応ラスト、今回の事件は後味悪く解決。
生徒の中に初の死者が出、ヴォルデモートが復活し、シリーズ始まった頃の夢見心地は、もう無い。