「食べたい食べたくないの基準が不明でより怖い。」ハンニバル movie mammaさんの映画レビュー(感想・評価)
食べたい食べたくないの基準が不明でより怖い。
話を聞くだけでも怖すぎて絶対に観られないと、映画館鑑賞はもちろん、その後も鑑賞を避けてきた作品。
ところが、テレビから知らぬ間に流れてきた映像に気づいたら引き込まれていて、途中でこれがハンニバルだと気付いた時には時既に遅し。レクター博士の手中。
引き込まれた理由は、ジュリアンムーア扮するクラリスの美しさ。アンジーより肉体的強さは劣るが、理知的。
レクター博士を擁護するわけではないが、食べ物の嗜好が人と相当異なり、好物のために殺さないといけないだけで中身は意外と鬼畜でないのかな?と思わされるところがまず怖い。
お気に入りのクラリスを食べたり傷つけることはしないのに、雑魚のような人間は平気で殺し食する。
好きな人は殺さず、他は躊躇いなく殺すところからは愛情が判断に影響しているのか?と一見推測されるが、
立ち振る舞いや料理から見ても美しさを好んでいながらクラリスを食して取り込みたいとは思っていそうにないし、食す人間がどんな人間性かには選別がないようだ。できるだけ苦痛を味わわせて殺したいという趣味もなさそう。
たいていの人間は、ただ食物として見られているだけなのか?とはいえ、人喰い豚を羨ましく思う様子もなかった。食べたい食べたくないの基準がわからない。
左手を切り落とし、三角巾をして逃亡してまで、右手だけで忘れずに脳みそ含む食材をわざわざ持ち運んでまで、機内で食べたいの?
クラリスはどうしてレクター博士を2度も助けるのか?
人喰いだとしても、FBI経験を経て組織犯の方が追いたいから個人犯のレクター博士からは凶悪性を感じなかった?FBIの仕打ちを鑑み、FBIの邪魔をしたかった?
おそらく感情的な理由。だとしてもクラリスは最後までレクター博士に靡く様子はなかった。なのになぜ?
ファザコンのような関係性?
レクター博士、クラリスともに、頭が良いようで、行動パターンを分析し尽くせないところがまた怖い。
レクター博士からすれば、ただ単に、手懐けて思い通りに利用するために、女性として扱っているだけなのかもしれない。
そしてそんなよくわからない、異常性のあるレクター博士が殺そうと思えば簡単に殺せる距離で無意識に何度も接し、隙ばかり見せてしまうクラリスも鍛錬が足りない。
レクター博士のような異常者が街に溶け込んでいる怖さ、すぐ近くにいる怖さ、好かれてしまう怖さ、人間同士の会話ができてもどこまで信じて良いのかわからない怖さ、逃す程度には信じてしまう怖さ。
目に見えない怖さが多すぎて、怖いはずのグロいシーンはインパクトが薄くなってしまう自分にも、怖い。
ただ、20年間の間に、ビジュアル的な怖さ、精神的な怖さともに、もっと怖い作品も沢山出てきているように感じた。